夫が死んだ。雪山の一軒家で、転落したのだ。不審死を遂げた男への殺人容疑は、妻に向けられた。事故か、自殺か、殺人か。本年度米アカデミー賞脚本賞を獲得した「落下の解剖学」のあらすじである。脚本が評価された法廷サスペンス映画ということで、かなり期待していた映画だ。
落下の現場検証から始まり、証言のズレから発言の信頼性が落ち、裁判が続くほどイメージが地に落ちてしまう。小さな疑念が雪玉のように坂を転がり落ちて、どんどん大きくなっていく。
そして恐ろしいのは、裁判であらわになる他人の秘密を面白半分で楽しむ、周囲のやじ馬的な視線だ。なぜなら、私も「妻が怪しい」と勝手な臆測を立てている1人だったからだ。主観でモノを見る浅はかさ、相手の立場を考慮しない冷酷さを指摘されたようでドキッとした。演出、脚本、演技どれを取っても秀逸な作品だ。(スターシアターズ・玉城愛鈴)
◇パレットで上映中。プラザハウスできょうから
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