一力遼本因坊が昼食に注文した信州そば御前=長野県高山村の藤井荘で2024年5月23日午後0時10分、長谷川直亮撮影

 長野県高山村の山田温泉「藤井荘」で23日に打たれている第79期本因坊決定戦五番勝負の第2局。初夏のこの時期、2021年から4年連続で本因坊戦や将棋の名人戦が行われている新緑の映える地で、対局を彩っているのが趣向を凝らした食事やおやつだ。

 午前10時半のおやつは、一力遼本因坊(26)が旬彩菓たむら(長野市)のたわわを注文した。リンゴのシナノゴールドをあんに使ったどら焼きだ。余正麒八段(28)は、りんごの木(長野市)のおしゃべり卵を頼んだ。一口サイズのチーズケーキとショコラ味のチーズケーキのセットだ。飲み物は一力本因坊が信州高山農園つちめぐ(高山村)の「サンふじ100%ジュース」、余八段が林農園(長野県塩尻市)のぶどうジュースコンコードを注文した。

 「おいしさはもちろん、対局室で召し上がるので、食べやすさも考えて選ばせてもらっています」と話すのは藤井荘の藤沢晃子社長。毎年、旅館の若いスタッフのセレクトを、藤沢社長が確認してメニューを最終的に決めているという。開催のたび、毎回異なる多彩な品を用意し、対局者に選んでもらっているのには、地域振興への願いがある。「コロナ禍で飲食店へのダメージは大きかった。地域に根ざしたお菓子に注目が集まるのはうれしい」と言う。

 午後0時半からの1時間の昼食休憩では、一力本因坊が信州そば御膳、余八段が焼き魚御膳を選んだ。食事も過去に対局者に選ばれたメニューや、他の対局会場のものも参考にしながら工夫を凝らしている。「どんな風景の中、誰と食べたか。食べ物の記憶は強く残る。作り手の思いや顔まで伝わったら、と思います」と、もてなしに心を尽くしている。【最上聡】

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