苦みを含んで微かに甘く…その味と香りで人類を魅了したコーヒー。今や世界では一日20億杯ものコーヒーが飲まれているといいます。世界中に広がったコーヒー。世界遺産をテーマにした番組を作っていても、コーヒーとの関わりに度々出くわします。

「キリマンジャロの恵み」キリマンジャロ・コーヒー

キリマンジャロの標高1200メートル付近にコーヒー農園がある

まずはタンザニアの世界遺産「キリマンジャロ国立公園」。標高5895メートルでアフリカ最高峰のキリマンジャロを今年撮影したのですが、その山腹、標高1200メートルの高地にもコーヒー農園がたくさんありました。生産しているのは、有名なキリマンジャロ・コーヒー。農園のひとつで、なぜこんな高地で栽培しているのか取材しました。

火山灰を含みコーヒー栽培に適した水はけの良い土壌

まずは土壌。キリマンジャロは火山活動で生まれたため、一帯の大地は大量の火山灰を含んでいます。そのため水はけが良く、コーヒー栽培に適しているとのこと。また生育する時期には多く雨が降り、収穫期には乾燥していることが必要で、雨季と乾季のあるキリマンジャロの環境はぴったり。また生育期に必要な雨も、インド洋から吹く湿った風がキリマンジャロにぶつかって降るので、まさにこの地のコーヒーは「キリマンジャロの恵み」ともいうべきものだったのです。

キリマンジャロ・コーヒーはアラビカ種

キリマンジャロで主に栽培されているのはアラビカ種という、世界のコーヒー生産量の約6割を占める品種です。その原産地は、平均標高が2000メートル以上もあるアフリカのエチオピアの高原。そもそも高地で生まれた品種でした。

アンデス山脈の急斜面「コロンビア・コーヒーの文化的景観」

アンデス山脈の急斜面にあるコロンビアのコーヒー畑

熱帯高地での栽培が適したアラビカ種は、南米にも広がりました。コロンビアの世界遺産「コロンビア・コーヒーの文化的景観」は、文字通り、アンデス山脈の高地で行われているコーヒー栽培が生んだもの。標高2000メートル、さらに斜度40度にもなる急峻なアンデスの斜面に畑があるため、機械化や大規模化が難しく、伝統的な家族単位で手作業で栽培する農家が残っているという特徴があります。労働には過酷な環境ですが、一方でここも昼夜の寒暖差、雨の多さ、さらにミネラルを含んだ火山灰の土壌など、良質なコーヒーを作るのにうってつけの条件が揃っていたのです。番組では、この「コロンビア・コーヒーの文化的景観」も今年撮影して放送する予定です。

コーヒー豆の積み出し港として栄えた港町は「1日2回水没」

わざと水没するように街づくりされたパラチー

番組でパラチーを撮影したのですが、面白いのは「毎日、街が水没する」こと。潮が満ちてくると、街のメインストリートが水路のように海水で満たされ、潮が引くとまた道路になるのです。実は街づくりの段階で、わざと毎日水没するように設計されていました。当時はまだ下水道がなく、人々は道路で用を足し、それを潮の満ち引きが水洗トイレのように海に流して処理してくれたのです。

このように世界遺産には、コーヒーと関わりのあるものがいろいろとあります。カーニバルで有名なリオデジャネイロも、コーヒーと街づくりが深く関わっている都市。ここも「リオデジャネイロ:山と海の間のカリオカの景観」という世界遺産になっていて、今年撮影して放送する予定ですので、ご期待ください。

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