尾上菊之助さん=東京都千代田区で2023年10月17日、宮武祐希撮影

 歌舞伎の人気俳優、尾上菊之助さん(46)が来年5~6月の東京・歌舞伎座を皮切りに各地で襲名披露興行を催し、八代目尾上菊五郎を襲名する。27日、松竹が発表した。「菊五郎」は「團十郎」と比肩する江戸歌舞伎の大名跡。

 同時に、菊之助さんの長男で歌舞伎俳優の尾上丑之助さん(10)も、六代目尾上菊之助を襲名する。

 菊之助さんは1977年、歌舞伎の人間国宝の尾上菊五郎さん(81)の長男として生まれた。母は俳優の富司純子さん(78)、姉は俳優の寺島しのぶさん(51)。84年2月の歌舞伎座「絵本牛若丸」の牛若丸で六代目尾上丑之助を名のり初舞台。96年5月の歌舞伎座「白浪五人男」の弁天小僧ほかで五代目尾上菊之助を襲名した。

 気品あふれる顔と姿、深みのある声、情感のこもった演技がそろい、立役、女形いずれでも活躍。時代物、世話物、舞踊と取り組むジャンルも幅広い。また、古典作品だけでなく、「マハーバーラタ戦記」「風の谷のナウシカ」といった新作歌舞伎も意欲的に手がけている。テレビにも、NHKの大河ドラマ「西郷どん」や連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」に出演し話題を呼んだ。

 一方、丑之助さんは2013年生まれ。16年5月の歌舞伎座「勢獅子音羽花籠」で初お目見え、19年5月の歌舞伎座「絵本牛若丸」の牛若丸で七代目尾上丑之助を名のり初舞台を踏んだ。【広瀬登】

尾上菊五郎家とは

 初代(1717~83年)は京都の生まれ。二代目市川團十郎と共演し頭角を現した。菊五郎家の「音羽屋」の屋号は、初代の父・音羽屋半平に由来する。

 三代目(1784~1849年)は怪談物を得意とし、「東海道四谷怪談」(鶴屋南北作)のお岩を初演した。五代目(1844~1903年)は幕末から明治にかけての劇界屈指の人気俳優で、芸を競った九代目團十郎と合わせて「團菊」と呼ばれた。六代目(1885~1949年)も明治から昭和の名優として知られ、初代中村吉右衛門と「菊吉」と並び称された。

 当代は、六代目の養子である名女形、七代目尾上梅幸の長男。丑之助、菊之助を経て、73年に七代目菊五郎を襲名した。繊細さと豪快さを併せ持ち、特に世話狂言では江戸の粋を体現、埋もれてしまった作品の復活にも力を入れる。現在の歌舞伎界では唯一、劇団制をとる尾上菊五郎劇団も率いる。

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