厳しい政権運営を迫られている岸田文雄首相(自民党総裁)。岸田氏が首相を続けるためには9月の党総裁選で再選される必要がある。毎日新聞が5月18、19日に実施した全国世論調査では、岸田氏が再選され、首相を続けた方がいいか尋ねたところ、「続けた方がいい」は12%にとどまり、「交代した方がいい」が72%と多数を占めた。国民は何を評価し、何を評価していないのか。そして自民支持層の「本音」は。調査の自由記述の回答から見えてきたことを報告する。
調査は固定電話と携帯電話のショートメッセージサービスを組み合わせて実施した。携帯電話で回答した543人を対象に上記の質問の回答理由を自由に書いてもらうと、423人が意見を記入した。
続投派「代わる人材がいない」
まず「続けた方がいい」と回答した人の理由で目立ったのが「他にいない」という回答だ。50代男性は「岸田首相に代わる人材がいない。政権を担える野党は存在しない」とし、60代女性は「他に支持する人がいない」と書き込んだ。積極的な評価としては「外交手腕は高い評価を受けている」(20代女性)、「外交のうまい岸田さんに続けてほしい」(40代男性)など外交面に集中しており、岸田内閣の外交への期待は大きいようだ。ただ、国内政策に言及する書き込みは少なかった。
交代派「国民の信用失った」
半面、「交代した方がいい」では、「裏金問題の実態解明が不十分、その他の問題についても全て本気に思えない」(60代男性)や「少子化対策が期待外れだった。人口が減り続けていく未来しか見えない」(30代女性)など、自民党派閥の裏金事件への対応や国内政策への不満が相次いだ。岸田内閣の支持率は今回調査で20%と11カ月連続で30%を下回っている。このためか、「国民の信用を失った総理は退陣すべきだ」(40代男性)、「岸田さんは一生懸命やっているが、国民の信頼が薄くなっているから交代の時期ではないか」(70代女性)といった指摘もあった。
複雑なのは自民支持層だろう。総裁選は自民党議員や党員による選挙だ。自民支持者に限ると、「続けた方がいい」の回答は40%で「交代した方がいい」(38%)と拮抗(きっこう)。「どちらとも言えない」も21%あった。4月の調査では、次の衆院選で政権交代してほしいか尋ねる質問で自民支持層の77%が「政権交代してほしくない」と回答しており、自公政権の継続を望む声が多数を占めていた。自民支持層の中で、岸田首相のもとで衆院選が行われた場合への不安が見え隠れする。
自民支持層で「交代した方がいい」と回答した人の理由を見ると、「裏金問題で派閥の長だった岸田首相が、自分だけ責任を取らずに他の人を処罰できるのか」(60代男性)、「裏金問題の対応が極めて不十分」(70代男性)など裏金事件への対応を問題視する声が目立ち、事件の影響の大きさがうかがえた。その一方で「岸田首相は交代した方がいいと思うが、誰が適任かわからない」(50代男性)という「悩み」も寄せられた。
裏金問題が直撃し、支持率が低迷する岸田政権。岸田首相が続投を果たすには、リーダーシップを発揮して裏金問題の不信感を払拭(ふっしょく)することが近道となるのではないか。【野原大輔、大隈慎吾】
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。