自民党の森山裕総務会長は28日の記者会見で、菅家(かんけ)一郎元副復興相が安倍派からのキックバック(還流)を原資とした寄付で税優遇を受けた問題に関連し、法制度を見直す必要性に言及した。政治資金規正法改正を巡る与野党協議の中で「協議をしていただくことが大事だ」と述べた。政治家が自ら代表を務める政党支部に寄付して税優遇を受ける仕組みは「抜け道」との指摘があり、野党からも見直しを求める声が相次いだ。
この問題で、菅家氏は2018~21年に安倍派から還流を受けた1289万円を原資に、自身が代表を務めていた党支部に寄付し、所得税の控除を受けたことが判明している。
菅家氏側は、政治資金パーティー裏金事件が発覚した後の24年1月、支部の政治資金収支報告書を訂正。菅家氏の寄付を、安倍派の寄付と修正し、所得税の控除分のうち148万円を国庫に返納したという。
租税特別措置法では、個人が政党などに寄付した場合、寄付額の約3割が税額控除されるか、課税対象の所得総額から寄付分が差し引かれる。
国会での政府側答弁では、政治家が自らの後援会に寄付するなど、寄付者に「特別の利益」がある場合は適用対象外とされたが、政党支部への寄付については明確な基準が示されていない。政党支部が事実上、政治家と一体になっているとして、過去にも問題視されてきた。
森山氏は28日、菅家氏について「政治に携わる者はたとえ違法ではないからといって国民の理解を得られないようなことは慎むべきだ」と苦言を呈した。梶山弘志幹事長代行も会見で「しっかりと本人が説明を果たすべきだ」と述べた。
公明党の山口那津男代表は同日の会見で「自民党の中でどう受け止めるか、きちんと国民に説明できるようにする姿勢が重要だ」と指摘。国会で審議中の政治資金規正法改正案を巡る与野党協議に触れ、「今後、あるべき政治資金のあり方をしっかり協議で煮詰めてほしい」と求めた。
立憲民主党と国民民主党が衆院に共同提出した改正案では、政治家が自ら代表を務める政党支部へ寄付を行った場合に、控除対象とならない措置が付則に盛り込まれている。
国民民主の玉木雄一郎代表は同日、政治家が政治団体への寄付で税優遇を受ける仕組みについて「錬金術になっている」と批判し、法改正を求めた。日本維新の会の音喜多駿政調会長も「政治団体への寄付で、政治家が全部私的に使うこともできてしまう。とんでもないスキームだ。今回の政治改革で改めて俎上(そじょう)に載せる必要がある」と述べた。【川口峻、野間口陽、田中裕之】
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