地方自治法改正案を賛成多数で可決した衆院本会議=国会内で2024年5月30日、平田明浩撮影

 自治体に対する国の指示権を拡大する地方自治法改正案は30日の衆院本会議で、自民、公明両党と日本維新の会、国民民主党などの賛成多数で可決し、衆院を通過した。立憲民主党や共産党などは「地方分権に逆行し、乱用の恐れがある」などとして反対した。政府・与党は今国会での成立を目指す。

 国の指示権は現状で、災害対策基本法や感染症法など個別法に規定があれば行使できる。

 改正案は大規模災害や感染症などの「想定外の事態」が起きた際、個別法に規定がなくても、国が自治体に必要な対策を指示できるよう特例を設ける内容だ。国民の生命保護のために特に必要な場合、閣議決定に基づき指示権を行使すると定める。

 衆院総務委員会の審議では、野党が国と地方を「対等」とする地方自治の原則に反すると指摘。恣意(しい)的な運用につながりかねないことから、指示権を行使する具体的なケースをただした。

 これに対し、松本剛明総務相は「個別法では想定されていない事態」などと答弁。「地方自治法の基本的な考え方を変えるものではない」と理解を求めた。

 立憲の吉川元氏は30日の本会議採決に先立つ討論で「今回の指示権の創設は地方自治に暗雲を漂わせ、分権改革に逆行する。到底容認できない」と述べた。

 改正案には自民、公明、維新の共同提案により、国の指示権行使後に国会への報告を義務付ける修正が加わった。また、全国知事会の要望を踏まえ、衆院総務委は28日、指示権行使に当たっては自治体との事前協議など「状況に応じて十分に必要な調整を行うこと」などを国に求める付帯決議を採択した。

 大型クルーズ船の新型コロナウイルス集団感染時に、患者の受け入れなどを巡って国と地方の調整が難航したことなどを理由に、政府の諮問機関「地方制度調査会」が昨年末、指示権拡大を答申していた。【安部志帆子】

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