政府は7日、岸田文雄政権の看板政策「新しい資本主義」の実現に向けた実行計画の改定案をまとめた。中小企業の賃上げの定着を目指し、労務費の価格転嫁の徹底や下請け法改正を検討するとした。映画やアニメなどコンテンツ産業の競争力を高めるため、国とクリエーターによる官民協議会の設置も明記した。
実行計画は2022年6月に閣議決定し、改定は昨年に続き2回目。改定案では、昨年を上回る賃上げや好調な設備投資、史上最高値の株価などを「成果」としながらも「デフレ脱却への道は、いまだ道半ば」と強調した。また、足元の円安について「今後の物価に与える影響についても十分に注視する必要がある」とした。中小企業の賃上げ定着▽三位一体の労働市場改革▽産業革新▽投資推進――の4分野を中心に取り組みを加速させる。
改定案では「中小・小規模企業の『稼ぐ力』の向上に全力を挙げる」と明記。労務費の価格転嫁を促すため、警備業や情報サービス業など転嫁率の低い22業種の自主行動計画の策定を加速させるとした。大企業が下請け業者に支払う代金を不当に低くする「買いたたき」を防ぐため、下請け法の改正を検討する。違反行為により勧告を受けた企業の補助金交付や入札資格の停止も検討する。
22年の輸出額が鉄鋼業(5・1兆円)に迫るコンテンツ産業(4・7兆円)の強化も盛り込んだ。「コンテンツ産業活性化戦略」を策定し、内閣府や文部科学省、公正取引委員会やクリエーターから構成される官民協議会を設置する。クリエーターの労働環境整備や海賊版対策、産業支援について戦略的な議論をする。
労働市場改革では、職務に応じて待遇する「ジョブ型人事」促進のため、導入している約20社の事例を集めた指針を今夏に公表する。解雇無効が裁判所で認められた場合に、労働者が金銭を受け取れる救済制度も検討する。投資分野では、生成人工知能(AI)向けの最先端半導体の開発支援とともに、経済安全保障の確保のため、半導体の国内量産拠点の整備支援などをするとした。
岸田文雄首相は7日に首相官邸で開いた新しい資本主義実現会議で「新たな官民連携、社会的課題解決と、経済成長の実現を掲げ、来年以降に物価上昇を上回る賃上げを定着させる」と述べた。改定案は、今年の経済財政運営の指針「骨太の方針」に反映され、21日にも閣議決定する。【古川宗】
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