16日告示される衆院3補欠選挙は、2つの選挙区で自民党が不戦敗という異例の展開となる見通しだ。自民が候補擁立などを断念した東京15区と長崎3区では、立憲民主党と日本維新の会の争いが軸となる公算が大きい。維新は立民から野党第一党の座を奪取する目標を掲げており、補選での両野党の攻防は次期衆院選の前哨戦の様相も見せている。

立民は15日朝、西村智奈美代表代行、長妻昭政調会長らが東京15区内の駅付近で街頭演説会を開き、通勤客らに党公認候補への支持を訴えた。

西村氏は、自民派閥パーティー収入不記載事件に触れ「政治とカネを巡る問題に、今回の補選できっぱりとけじめをつけないか」と呼び掛けた。

一方、維新は14日、吉村洋文共同代表(大阪府知事)が15区入りし、街頭でマイクを握った。

吉村氏も「政治とカネ」問題を中心に訴えを繰り広げたが、言葉の端々に立民への対抗意識がにじんだ。

立民の源流の民主党が平成21年衆院選で企業・団体献金禁止の方針を掲げて政権を獲得した経緯に言及した吉村氏は「約束を守っていない。撤回した」と批判を展開。その上で「われわれは企業・団体献金はもう受けていない」と強調し、「有言実行」の姿勢のアピールに余念がなかった。

15区には立民新人や維新新人が出馬し、他にも無所属や諸派の多数の候補が立つ見通しだが、立民の閣僚経験者は「有権者に『本物』と映るのは、わが党と維新だけだ」と語る。選挙区内での一定期間以上の活動の積み重ねがあるなどの点で、両党公認候補と他の候補の間には深い溝があるという意味だ。

それだけに、立民、維新それぞれにとって、補選の結果はその後の主導権争いにもかかわる重要な戦いといえる。16日の告示日には、立民の泉健太代表、維新の馬場伸幸代表がいずれも15区に入り、党公認候補のてこ入れを図る予定だ。

一方、長崎3区では、比例選出の立民現職と維新新人が争う。東京15区、長崎3区ともに立民が優位な戦いを展開しそうだが、長崎のほうが差は大きいとの見方がもっぱらで、維新からも「現職はさすがに強い」(幹部)との声が漏れる。

両選挙区の戦いの目標を、立民の閣僚経験者は「どれだけ維新に差をつけて勝てるかだ」と強調する。維新関係者も「立民候補に食らいつき、自民に代わる政党は維新だとはっきりさせる」と語った。(深津響)

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