大規模災害や感染症の大流行などの非常事態に国が地方に対応を指示できるようにする改正地方自治法が19日の参院本会議で、自民、公明両党などの賛成多数で可決、成立した。国から地方への新たな指示権が設けられることに、立憲民主党や共産党は「地方分権の流れに逆行する」として反対。衆院審議で指示権乱用を防ぐための「歯止め策」が追加されたが、法案の抜本的修正はなかった。改正法は一部を除き9月に施行される。

 国の指示権は、法的拘束力を伴って地方を従わせる強い権限で、現行は災害対策基本法など個別法に規定がある。しかし、国は新型コロナ禍で個別法で対応できない想定外の事態が発生したことを教訓に、地方への新たな指示権を設けて「法の穴」を埋め、非常時に国の責任で対応できる体制を整える狙いがある。

 ただ、政府は国会審議で、指示権を行使する事態の具体例を一切示さず、野党側は「立法事実がない」と反発。国が「非常時」を恣意(しい)的に判断し、指示権が乱用される懸念については、国が行使後に指示内容を国会に「事後報告」する義務が追加されたものの、自治体からの事前の意見聴取は努力義務にとどまった。(千葉卓朗)

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