16日に告示された衆院3選挙区の補欠選挙は岸田文雄政権の浮沈を左右する。自民党は東京15区と長崎3区は不戦敗が決定している。唯一候補者を擁立し、立憲民主党との一騎打ちとなった島根1区を落として3戦全敗となれば退陣論が勢いづきかねない。6月23日に会期末を迎える今国会での衆院解散の選択肢も封じられる可能性がある。
「大変な政治不信を招いた」。自民の小渕優子選対委員長は16日、島根1区の公認候補の応援演説を行った。派閥の政治資金パーティー収入不記載事件に関して頭を下げ、党改革を進めると強調した。
事件は強烈な逆風となっている。補選は同区選出の細田博之前衆院議長の死去に伴うもので、細田氏は事件を起こした自民安倍派(清和政策研究会)の元会長だ。告示前に現地入りし、支援者らとの会合を持った自民ベテランは「細田さんの名前は出しにくい。弔い合戦の雰囲気はゼロ」と語る。
「やはり『政治とカネ』に、とりわけ自民党がどういう姿勢を見せるかが焦点になる」。推薦を出した公明党の山口那津男代表は16日の記者会見でこう語り、政治資金規正法改正など再発防止策作りで自民の改革姿勢が問われていると指摘した。
首相の党総裁任期満了まで残り5カ月。首相の訪米は成功し、共同通信社が13~15日に実施した全国電話世論調査によると内閣支持率は23・8%と上昇に転じた。6月には所得税などの定額減税を始め、政権浮揚を図った上で9月の総裁選で再選を果たしたい考えだが、補選全敗なら政権運営は再び暗転する公算が大きい。
自民中堅は「岸田政権が続くかどうかは島根1区に左右される。落としたら岸田おろしが始まるでしょう」との見方を示す。菅義偉前首相は令和3年4月の衆参3補選・再選挙で1勝もできず、自民内で「菅首相では次期衆院選を戦えない」と退陣論が強まった。(田中一世)
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