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時事通信が4月5日行った世論調査では、岸田内閣の支持は16.6%、不支持は59.4%となり発足後最低となった。同時に行われた“裏金問題”の処分に対しては、56.4%が「処分が軽すぎる」と回答した。

“裏金問題”で、再発防止に向けての法改正が動き出したが、自民党はどこまで踏み込めるのか?

1)「企業・団体献金」の禁止は? 過去には「抜け道も」

ポイントとなるのが「企業・団体献金」だ。自民党は「禁止は難しい」、公明党は「議論が必要」としているが、野党は「禁止、廃止」の姿勢で共通している。

「企業・団体献金」は、以前から議論になってきた。1994年の政治資金規正法の改正で、議員個人への献金が禁止された。1999年には資金管理団体への献金も禁止された。しかし政党への献金は認められており、会社や団体の規模に応じ、年間750万円から1億円の上限が定められており、5万円以下は非公開となっている。 「抜け道」と指摘されているのが、政党支部への献金だ。議員が代表を務めるケースが多く、政党なのか議員なのかあいまいな部分があり、実際には政党支部から議員側へ資金を迂回させる可能性があるとされる。
さらに「資金管理団体」に対して献金は禁止でも、パーティー券は購入可能となっている。

共産党の田村委員長は「一番重要な課題は『裏金』のもとになったパーティー券の販売を含めた企業・団体献金の禁止になる」と述べ、立憲民主党、長妻(ながつま)政務調査会長は「カネの力で国の予算や法律がゆがめられるのを根本的に直すには企業・団体献金を禁止することが肝要だ」としている。

一方、自民党の規正法改正に関する作業部会の鈴木座長は、「企業団体献金禁止については、色々な成長戦略を考えたときに企業も声を出せる場が大事。憲法解釈の話もありなかなか難しい」と、難色を示す。 久江昌彦氏(共同通信社編集委員兼論説委員)は次のように述べる。 1999年小渕内閣のときに抜け道を残したことが、事の発端と言える。政党交付金は国民1人当たりコーヒー代250円として今は全政党で約320億円、自民党が約半分の160億円を受けている。税金から政治に使う金が来るから企業団体献金はなくす方向で5年後に見直し、となっていたが抜け道が今日まで残っている。本筋からいけば企業団体献金はやめてしかるべきで、現状、二重取りになってることは間違いない。 一方で現状、自民党は地方では秘書が約10人(公設秘書3人以外に6、7人)が活動しており、彼らは地域の声を拾ったり集会に参加したりと必要なはたらきがある。野党側は秘書の数も少ないので、かかるお金の額は異なる。この現実を踏まえて、どこにどれだけお金がかかるかのか、なぜ企業団体献金やパーティーが必要なのかを明らかにし、与党と野党で立場は違えど「政治には金がかかる」と本音ベースで真正面から議論をする必要があるのではないか。

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2)個人献金を増やすための制度改革の必要性も?

2)個人献金を増やすための制度改革の必要性も?

中北浩爾氏(中央大学法学部教授)は、次のように指摘する。

政党支部システムを廃止しても党本部から還流させたり、政治献金を禁止しても企業広告やボランティアするなど、抜け穴というのは常に起きてくる。そもそも企業・団体献金は、規制法改革前から約7分の1ぐらいなっているし、諸外国でも禁止しているのは約2割でしかない。あまり極端なことを言っても実効性はなかなかない。私は、本筋は個人献金を増やしていく必要があり、そのためにどういう税制が可能なのかを考える必要があると考える。減らす話ばかりではなく金をかけるところにはかけるという発想も重要だ。汚い汚いとばかり言っていたら民主主義は死んでしまう。政治活動にも資金はかかるということを我々も受け入れていく必要があるのではないか。

3)議員側に資金の受け皿が複数あることが全体像の把握を困難に

政治資金に詳しい、富崎隆氏(駒沢大学教授)は、議員側に資金の受け皿が複数あり、政治資金全体の流れを見えにくくしていることが問題だとして、国会議員の持つ「3つの財布」について指摘する。

1)一つ目が政党支部だ。議員の多くが、支部長の肩書きを持つ、企業・団体献金の事実上の受け皿と言われ、企業・団体献金を受けている。

2)二つ目が「資金管理団体」だ。政治家が政治団体の中から一つだけ選択する、政治資金の拠出を受ける政治団体で、パーティー券を個人や企業団体が購入したときの収入が入る。

3)三つ目が「その他の政治団体」で後援会なども含まれる。資金管理団体や別の政治団体からの寄付を受け、議員が複数保有することが可能だ。

中北氏は「さらに政治資金には政治家個人のものもある。」として、次のように指摘した。

いわゆる政策活動費が政治家個人に行ったり、選挙運動費用などもあり、本当に細分化され、わかりにくくなっている。収支報告書の公開がPDF公開になってるのと一緒で、チェックを難しくすることでわからないようにする隠れ蓑になっている。これらを一括化して「見える化」していくということは、最も重要なことの一つだ。

久江氏は次のように指摘した。

今回の問題のポイントは二つに集約される。議員も責任をとるという「連座制」と「透明化」だ。政治資金規制法の前文には「公開することによって国民の批判と監視のもとに置く」ということが明確に書かれてる。政治資金は基本的に一本に絞り金の出入りをデジタル化し検索化しやすく透明化することが重要だ。

また富崎氏は「政治とカネ」について、以下のように話した。

民主政治というのは、政治資金これ自体が全部が悪ということは絶対にない。オバマ大統領は再選の時に約1000億円を集めて使っている。人々を説得して運動をして様々な活動をするということに資金がかかること自体はある種の政治参加のあらわれだ

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4)実効性のある改革の必要性

4)実効性のある改革の必要性

では実効性のある制度資金制度改革のためには何が必要となるのか?杉田弘毅(共同通信社特別編集委員)は次のように述べた。

国民は「政治は何のためにあるのかという議論が抜け落ちている」部分に違和感を覚えている。政治の目標は、本来、日本を平和にし国を繁栄させることだ。政治を行うのに金がかかるなら、そう宣言し透明化と一本化することが必要だ。法律の条文に違反したから500万円の線引きをして処分をするのでは、処分に対して不満を持つ人もいるし、なぜ岸田首相が処分されないのかという話にもなる。細部に収斂してしまうと、本来の政治の目的やあるべき姿から離れてしまう。政治家が法律や規則を全て守って絶対に違反しないことだけを重視していると、選挙区住民の声を聞き、大きな構想で物事を進める、政治の大切な動きが抜け落ちて、小さな政治に向かい、皆で監視する政治になってしまうのでは、という恐れも感じる。

久江氏は次のように述べた。

現状は、車の制限速度で80キロ制限を守れなかったから60キロにしよう、次は40キロだというような話で、ルールを守らない政治家の倫理感や責任感が問われている。そこを問うことこそが選挙だ。

中北氏は

厳罰化して抑止効果さえ働かせられれば、それなりにもっと機能する形になっていくのではないか。ただ、そこだけを小さく低くやっていくと政治が死んでしまうのではないかということを個人的には危惧している。本当に有効な政治改革、政治資金制度改革を、与野党、知恵を絞って、ぜひ進めていただきたい。

久江昌彦(共同通信社編集委員兼論説委員、杏林大学客員教授。永田町の情報源を駆使した取材、分析に定評)

中北浩爾(中央大学法学部教授 専門は政治学、自民党の歴史と政策等に精通。『自民党-「一強」の実像』など著書多数)

杉田弘毅(共同通信特別編集委員 ワシントン支局長、明治大学特任教授。NY特派員など米国で通算12年の取材活動。2021年度「日本記者クラブ賞」)

「BS朝日 日曜スクープ 2024年4月14日放送分より」

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