第2次安倍内閣が憲法9条の解釈を変更し、集団的自衛権の行使を容認した閣議決定から、7月1日で10年となる。日本への攻撃時に限定していた自衛隊の武力行使は、米国など日本と密接な関係にある他国が攻撃された場合にも拡大。この解釈改憲は「平和国家」のあり方が変質する起点となり、10年間で日米の軍事的一体化、専守防衛の形骸化が進んだ。(川田篤志、大杉はるか)

日米共同訓練の陸自隊員と米陸軍兵=陸自饗庭野演習場で(資料写真)

◆一内閣の判断で政府解釈を変更した2014年の閣議決定

 2014年7月1日の閣議決定は、歴代内閣が継承してきた集団的自衛権の行使を憲法違反とする政府解釈を一内閣の判断で変更。「日本と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、日本国民の権利や生命が根底から覆される明白な危険がある」場合に、自衛隊は武力を行使できると新たに定めた。  閣議決定を根拠に、15年には集団的自衛権の行使容認を柱とする安全保障関連法が成立。他国攻撃時の防衛出動や、平時に米国の艦船などを守る「武器等防護」のために自衛隊が武器使用することなどが新たに規定された。安保法に基づき米軍やオーストラリア軍との共同訓練で武器等防護が実施されるようになった。

◆防衛政策の転換を加速させる岸田内閣

 岸田内閣は軍事大国化につながる防衛政策の転換をさらに進めている。  22年末には国家安全保障戦略など安保関連3文書を改定し、敵基地攻撃能力の保有を明記。23年度から5年間の防衛費は43兆円と従来の1.6倍に増額される。「台湾有事」を想定した南西諸島での自衛隊の体制強化、戦闘機や艦船が使用できる「特定利用空港・港湾」の選定も進む。

海上自衛隊護衛艦「いずも」。事実上の空母化に向けて同型艦の改修が進められている。(資料写真)

 武器輸出ルールを改め、ミサイルや弾薬など殺傷能力のある武器の輸出、戦闘機の日本から第三国への輸出を解禁した。  24年度中には、米軍との指揮統制の連携を円滑にする「統合作戦司令部」が自衛隊に創設される予定で、日米一体化はさらに進むことになる。 

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