コメを植えた直後から苗を食い荒らすジャンボタニシ。今年6月、注意報が県内で初めて発表されました。県の調査で例年の3倍確認されたということで農家の現状を取材しました。
【古川茂利さん】
「被害を食い止めるって言うことよりも、とにかく何とかっていうような感じですね。自分の気持ちを紛らわすような感じですかね」
佐賀市東与賀町のコメ農家古川茂利さん。
6月下旬、田植えの時期を迎えた古川さんの田んぼに大量に発生していたのが…
【原竹凌太朗】
「ここの石みたいなやつが全部ジャンボタニシ」
【古川茂利さん】
「そうです」
【原竹凌太朗】
「ここ見るだけでも100匹くらいいそうな」
【古川茂利さん】
「100匹以上でしょうね」
【原竹凌太朗】
「これが田んぼ全体に」
南米原産の巻貝スクミリンゴガイ通称「ジャンボタニシ」です。
稲の苗を食いあらし、農家に大きな打撃を与えます。
【古川茂利さん(75)】
「水をちょっと張ってくると、それが全体に広がってくるということで最終的にもうほとんど食べられるということになってしまうからですね」
2センチほどから大きなものはこぶし大まで成長するというジャンボタニシ。
好んで食べているのが田植えしたばかりのやわらかい苗です。
田んぼに浮かんだ緑色のちぎれた葉。
ジャンボタニシが苗の根本を食い荒らした跡です。
撮影したこの日はなんと田植えの翌日。
このジャンボタニシについて例年の3倍の量が確認されたとして県は6月5日「ジャンボタニシ注意報」を発表しました。
注意や防除を呼びかけるもので県内で発表されるのは初めてです。
古川さんの田んぼでは、田植え後の水位を低くして、水たまりにジャンボタニシが集まったところで薬剤を撒き、駆除を行っていました。
広さは6.5ヘクタールあり、作業は1日がかりです。
【古川さん】
「今のところまずは薬をスクミンベイトとかいうふうないろいろありますけど、そういうのをとにかく振ってそこでまず増えないように抑えることしか今のところないですね。まずは生産者の皆さんが協力して地域全体でそういうな防除の取り組みをもっと考えていく必要があるかなと思います」
ここからは取材を担当した原竹さんです。
【キャスター】
初の注意報ということですがなぜ今年はジャンボタニシが増えたんでしょうか?
【原竹凌太朗】
ジャンボタニシの習性が関係しています。南米が原産のため寒さに弱く気温が低すぎると死んでしまいますが、今年は、観測史上2番目に冬の平均気温が高かったことから、より多くのジャンボタニシが一時休眠して冬を超え今活動を再開しているとみられています。
【キャスター】
具体的な数はどのくらいなんでしょうか
【原竹凌太朗】
地域によって発生数にバラツキがあるので正確には言えませんが、5月の早植え苗の田んぼでの調査では1平方メートルあたりおよそ6.8匹。
早植えの田圃は佐賀県全体10分の1以下ですが、それでも1億匹いる計算になります。
【キャスター】
薬剤以外の取り組みは?
【原竹凌太朗】
県内のメーカーもジャンボタニシの対策に注目し装置や商品の開発に取り組んでいます。その1つがこちらです。
みやき町の大栄工業がプラスチック製造技術を活かし作った捕獲機で、薬を使わないのが特徴で特許を取得しています。
白石町では、2012年と2021年にジャンボタニシを食べるとされるスッポンを放流する対策を講じています。
スッポンにジャンボタニシを食べてもらって数を減らそうという狙いですね。
【キャスター】
実際に効果は?
【原竹凌太朗】
その後、具体的に減少が確認されたというデータはないのが現状です。また、生態系への影響を懸念し放流に慎重であるべきとの意見もあるそうです。
多くの農家が取り組む薬剤の散布も、雨で流されてしまうと効果が薄れるので、現在、ジャンボタニシ駆除の特効薬はない状況です。
そしてもう一つ、近年農家を悩ませている問題が、物価や燃料費の高騰です。
古川さんの所有する田んぼを例にすると、約6.5haの田んぼ全てに薬剤を散布するとなると、合わせて約30万円程購入費用がかかります。
すでに燃料価格の上昇や猛暑による収量減少に苦しめられる中、ジャンボタニシによる食害や対策とコメ農家の負担は増えています。
食の根幹を担うコメの生産を安定して継続できるよう地域や行政と連携した対策が求められます。
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