政府は9日、災害時などに海上で患者を治療・運搬する「病院船」の導入に向けた「船舶活用医療推進本部」の初会合を首相官邸で開いた。2025年度中に運用を始める方針で、岸田文雄首相は年内をめどに病院船を整備する計画をつくることを指示した。
首相は具体的な制度や運用体制を考えるよう求めた。「予算の確保、海外の先進事例を含めた知見の収集、災害対応の専門人材の育成にも取り組んでほしい」と語った。
政府は国内で定期航路を運航している民間のカーフェリーなどに医療機材を積み込んで活用する方式を軸に検討する。25年度予算案に必要な経費を盛り込むことを視野に入れる。将来的には政府による病院船の確保もめざす。
整備計画は12月までに閣議決定する見通しだ。導入に向けて病院船の運用の手順を検証して活動マニュアルも作成する。
病院船は、地震をはじめ大規模災害が起きた際に負傷者らを被災地から離れた病院に搬送するほか、付近に接岸して救護にあたる。被災地の医療機関が機能不全になったり収容能力を超えたりした場合、外部から船舶による支援が必要になる。
新型コロナウイルスを契機として21年に推進本部を設置するための関連法が成立し、今年6月1日に施行した。
米国や中国などは海軍が病院船を保有する。日本は東日本大震災後に導入を検討したものの、専用船の建造にかかるコストがかさむため見送った経緯がある。医療スタッフや運航要因の確保や平時での活用に課題がある。
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