NATO加盟国とパートナー国を招いた夕食会を前に、ホワイトハウスのバルコニーで記念撮影に臨む岸田文雄首相(右端)。中央右はウクライナのゼレンスキー大統領、同左は韓国の尹錫悦大統領=米ワシントンで2024年7月10日、ロイター

 岸田文雄首相は11日(日本時間同日)、訪問先の米ワシントンで、北大西洋条約機構(NATO)加盟国に日本、韓国、オーストラリア、ニュージーランドの4カ国(IP4)を加えた首脳会合に出席し、日本とNATOの間で秘匿回線を設置するなど情報共有を強化する方針を表明した。IP4とNATO間の協力としては、ウクライナ支援▽サイバー防衛▽偽情報を含む敵対的情報▽テクノロジー――の4項目を「旗艦事業」と位置づけ、具体的な共同計画を策定する方針も打ち出した。

 首相は会合での演説で、「欧州・大西洋とインド太平洋の安全保障は不可分」との認識を多くの首脳が共有していることを歓迎。ロシアと北朝鮮の急速な軍事協力の進展を「深刻に憂慮すべきだ」と警鐘を鳴らした。また中国を念頭に「東・南シナ海における一方的な現状変更の試みは認められない」と呼びかけた。

 NATOはインド太平洋地域への関心を強めており、日本は2022年から3年連続でNATO首脳会議に参加。岸田首相も、厳しさを増す東アジアの安定化には欧米の関与が欠かせないとして、昨年7月に日NATO間の協力事項をまとめた文書「国別適合パートナーシップ計画(ITPP)」を策定するなど、連携強化を推進してきた。

 演説ではITPPに基づき、秘匿情報の共有体制整備やバルト3国のラトビアにあるNATO戦略的コミュニケーション研究センターへの職員派遣を打ち出した。機微な情報を扱うNATO加盟国の会合への日本の参加が容易になり、情勢認識や技術情報を速やかに共有できるようにする。同センターは偽情報対策で先行するNATOの知見が蓄積されており、ロシアや中国による情報戦への対処力向上を図る狙いがある。

 海上自衛隊の練習艦隊とNATO海上部隊を想定した共同訓練の年内実施や、NATOとIP4を招いた戦略的コミュニケーションに関する国際会議を年度内に日本で開催することも表明した。

 ウクライナ支援については、無人機検知システム向けなどで、NATOの信託基金にこれまで約6700万ドル(約108億円)を拠出したことに触れ、今後も支援を惜しまない考えを明示。IP4として医療分野に注力する方針も示した。

 首相は演説に先立ち、NATOのストルテンベルグ事務総長と会談。IP4にウクライナのゼレンスキー大統領を加えた首脳会合にも出席し、これらの場で同様の方針を打ち出した。【ワシントン中村紬葵】

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