陸上自衛隊「水陸機動団」(2023年11月、鹿児島県・徳之島)=共同

木原稔防衛相は12日の閣議で2024年版の防衛白書を報告した。北朝鮮の核・ミサイル開発について「質的な意味で能力向上に注力している」と指摘した。固体燃料型の大陸間弾道ミサイル(ICBM)「火星18」や中距離弾道ミサイル「火星16」の発射に成功したことを踏まえた。

核・ミサイル運用能力を補完するため「装備体系の多様化や核・ミサイル運用能力を補完する情報収集・警戒監視・偵察(ISR)手段の確保」を図っているとも明記した。北朝鮮は軍事偵察衛星を23年11月に発射し、24年に3基を打ち上げる方針を掲げる。

東アジアの情勢を巡り「ロシアによるウクライナ侵略により、国際秩序を形づくるルールの根幹が簡単に破られた。同様の深刻な事態が東アジアにおいて発生する可能性は排除されない」と記した。

中国の軍事動向については「日本と国際社会の深刻な懸念事項でこれまでにない最大の戦略的挑戦」との見方を維持した。沖縄から台湾、フィリピンを結ぶ「第1列島線を越え、(小笠原諸島から米領グアム、パプアニューギニアにいたる)第2列島線に及ぶ日本周辺全体での活動を活発化させる」と評した。

23年版では「第2列島線を含むより遠方の海空域における作戦遂行能力の構築を目指している」との分析にとどめていた。

中国軍の台湾周辺での軍事活動は活発な状態が続いている。23年8月に実施した台湾周辺での軍事演習については「台湾侵攻作戦の一部が演練された可能性がある」と分析した。「中国側の軍事活動の活発化により、中台間の軍事的緊張が高まる可能性も否定できない」と言及した。

台湾もウクライナ侵略や中国軍の活動を踏まえて、中国軍の着上陸に備えた訓練を実施するなど、自身の防衛努力を強化していると盛り込んだ。

ウクライナ侵略についてはロシアが「北朝鮮から砲弾やミサイルの調達などにより戦力を維持している」と指摘した。中国とロシアは共同訓練を繰り返している。23年に引き続いて「示威活動を明確に意図したものであり、日本の安全保障上、重大な懸念だ」と書いた。

韓国との関係改善も触れた。6月にシンガポールで開いた防衛相会談で、18年に発生したレーダー照射問題の再発防止策をまとめた。この時の内容を写真付きで示しながら、韓国を「国際社会における課題への対応にパートナーとして協力していくべき重要な隣国」と紹介した。

防衛産業についての記述は23年版と比べて10ページほど増やした。新たに制定した防衛産業基盤強化法を説明したほか、フィリピンに供与した警戒管制レーダーを運用する比空軍司令の声も載せた。

防衛白書は防衛省が毎年つくる。24年版は23年4月から24年3月までの主な動向を新たに反映した。

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