愛媛県の松山城の城山で12日に崩れた斜面の頂上付近では、7月から「緊急車両用道路」の復旧工事が行われていて、災害との因果関係が調査されています。この工事は約1年前に傾いた道路を復旧するためのものでした。なぜ工事の開始まで1年もかかったのか。そこには松山城が抱える特有の事情がありました。
土砂崩れの現場近くの住民:
「松山城の緊急用の車両が通る道なんよね。あそこにひびが入っとったもんね。もう口あけとったもん。1年ぐらい前から」
「緊急車両用道路」は、松山城の山頂付近で2018年に整備。救急車や消防車などが天守まで乗り入れできるようにするためです。
この道路の擁壁が去年7月の大雨で傾いたため、市は約1年後の7月から復旧工事を開始。早速路面に大きなひび割れが確認されたため擁壁などを撤去し、雨水が入らないようブルーシートで覆う対策を行ったとしています。
ただ近くの住民からは「この工事がもっと早く行われていれば、被害がここまで大きくならなかったのでは」との憤りの声もあがっています。
土砂崩れの現場近くの住民:
「大雨が降って7月1日の時、水が道路の割れ目に入って滑り台みたいになっとった。崩れて(土砂が)ここに来た。これはもう(自然)災害ではないと思うよ。1年前に大雨が降った時も道路が崩れかかっとった。早い時から(工事を)していたらいいんやけども」
ほかの近くの住民:
「城の回りの緊急通行道路の舗装をひび割れがいった状態で1年あまり手を付けず、ほかの観光施設に力を入れるより、地元住民の生活と命を守るため早急にすべきことだと思う」
なぜ道路が傾いてから工事開始まで1年もかかったのか。
野志市長:
「松山市としては、早く工事をしたいという思いはもちろんございます。(ただ)国の史跡文化財なので『文化庁の許可が必要なんだ』と。指示される発掘調査が必要なんだと聞いています」
工事には事前の発掘調査や文化庁の許可が必要。結局、文化庁から工事の許可が出たのは今年5月。去年の夏の異変から工事開始まで1年かかることになりました。
今回の土砂崩れについて愛媛大学の専門家らが15日、山頂付近で合同調査を実施。公開された調査結果の速報によりますと「斜面の崩壊が上部から始まったか、中腹部から始まったか、あるいはその両方かは今後の検討が必要」としています。また、ふもとの住宅が破壊されたメカニズムは「崩れた土が木と一緒に流れ落ちたあと、少し遅れて泥のような土砂と流木が防護ネットを破壊したり乗り越えたりするなど、『複数の過程があった可能性が考えられる』」としています。
愛媛県や松山市、愛媛大学などは土砂崩れの発生メカニズムや再発防止策を検討するため、専門の委員会を設置。被害を繰り返さないために原因究明が急がれます。
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