選挙区内の自治体への寄付をめぐり、公職選挙法違反容疑で告発された自民党衆院議員(埼玉10区)の山口晋氏(40)をさいたま地検が不起訴としたことについて、さいたま第一検察審査会が不起訴不当の議決をした。議決は7月4日付。

 公職選挙法は、選挙の候補者や候補予定者が役職員を務める会社が、候補者の名前を類推できるような方法で選挙区内で寄付することを禁止している。

 告発などによると、晋氏が取締役を務める坂戸ガスが2021年9月、坂戸市に1千万円を寄付した。目録は同社代表取締役で衆院議員だった父の泰明氏が持参した。晋氏はこの時点で父の後継として立候補することを公表しており、実際に翌10月の衆院選で当選した。

 議決要旨によると、晋氏が父の地盤を継ぐことは「選挙区内で周知の事実」だったとし、寄付が晋氏の名前を類推させるような方法でなされたと認める余地が十分にあると判断。選挙に関しての寄付に当たるとみても不自然ではないとし、検察に対し「社会的正義の実現」への市民の期待を考慮した再捜査を求めた。

 この寄付をめぐっては、泰明氏への不起訴処分について検察審査会が23年12月に不起訴不当と議決し、再捜査で改めて不起訴となっている。晋氏は24年3月に不起訴処分となったが、市民団体が同5月に検察審査会に審査を申し立てていた。

 市民団体は「寄付をめぐって2度目の議決。市民感覚に基づき、さらに踏み込んだ判断をしてくれた。今度こそ検察は捜査を尽くしてほしい」と話す。

 一方、坂戸ガス側は「議決内容を把握していないのでコメントできない」と回答。さいたま地検の井ノ口毅次席検事は「証拠関係を検討し、適正に対処したい」とした。(永沼仁、浅田朋範)

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