河野太郎規制改革担当相が「タクシーが実際は空車なのに『迎車中』と表示する例があると聞いている」と指摘したことについて、斉藤鉄夫国土交通相は2日の閣議後記者会見で「把握していない」と否定した。
7月29日に開かれた政府の規制改革推進会議作業部会で、事務方が河野氏のあいさつを代読。この中で、「タクシーが実際には空車にもかかわらず『迎車中』と表示し、アプリでの配車依頼にすぐに対応できるようにしてマッチング率を引き上げようとする動きがあると聞く」と指摘。さらに「事実なら見せかけのマッチング率を作るものだ」と非難していた。
河野氏の指摘への見解を問われた斉藤氏は「ご指摘のようなマッチング率を引き上げるために、空車状態であるにもかかわらず迎車の表示をする動きがあるといった事実を、国交省としては把握しておりません」と回答。事実であれば道路運送法に違反する恐れがあり、「仮にアプリ利用客を不適切に選んでいることが確認された場合には、しっかりと指導してまいりたい」と付け加えた。
河野氏が指摘した背景には、一般ドライバーが自家用車を使って有償で客を運ぶ「日本版ライドシェア」を巡る政府内の対立がある。国交省は、日本版ライドシェアはタクシー不足を補うものとして、運営主体をタクシー会社に限定している。河野氏はそれでもタクシー不足が解消されていないとして、ライドシェアをタクシー会社以外にも解放するよう主張。斉藤氏はタクシー業界の意向を受け、規制緩和に反対している。
作業部会では、配車アプリのマッチング率のデータを基に、タクシー不足が起きているかどうかを議論している。河野氏の指摘は、タクシー事業者がマッチング率が高くなるように偽装しているとの疑惑を示唆したもので、ライドシェアの規制緩和に向けて議論を優位に進める狙いがあったとみられる。【原田啓之】
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