尾花沢市特産のスイカは、お盆頃まで出荷のピークが続く。近年は、担い手の高齢化や後継者不足が課題となる中、この夏初めて出荷の季節を迎えた新規就農者がいる。

夏真っ盛りに全国に出荷される甘くておいしい「尾花沢すいか」。

(スイカをポンポン叩きながら)
「この音」

尾花沢市の佐々見雄平さんは、去年、就農しスイカ栽培を始めた。
「農業をやりたい」、長年の思いが叶い、今は1年目の収穫作業に追われる毎日。

(佐々見雄平さん)
「祖父がトマト農家をしていた。小さい頃はじいちゃんのハウスに行ってトマトをもいだりしていた。だから農業をやってみたいなという気持ちはあったが就職先としては選択肢にはなかった」

広島県出身の佐々見さん。元々は電気自動車関連の仕事をしていて、農業は未経験だったが、結婚が転機となった。

(佐々見雄平さん)
「妻が尾花沢の出身で、結婚を機に尾花沢すいかを知った。やってみたいなという気持ちにスイッチが入った」
(佐々見雄平さん)
「(スイカを持って)重いっすよ。(他の畑へ研修に)僕が行ったらこれやれって。60代とか多い。1個10キロ超えるので、若い人増えてうれしいとか言ってもらえると来てよかったなと本当に思う」

農家の高齢化は、尾花沢市でも慢性的な課題。スイカ生産の担い手も70代がメイン。
品質や出荷量を何とか守りたいという生産者の思いに応え、市は2016年から独自の取り組みを始めた。

(尾花沢市農林課・五十嵐満徳課長)
「まずは生活支援で月10万円を支援。住む場所も月最大4万円、車のリース支援もしている」

市独自の新規就農支援制度では、年間で最大216万円を支援。これは国の新規就農支援の1.5倍の額。
佐々見さんもこの制度を利用した一人で、この手厚さも後押しとなり去年6月に尾花沢市に移住。
「尾花沢すいか」の生産の担い手となった。
軽トラックや住宅、収穫に必要な運搬機に支援金を活用したそう。

(佐々見雄平さん)
「一からとなると全部買わなきゃいけないので、少しでも補助があるといいところを軽トラも出してくれる家の補助もあったりとか様々」

市内の農家の下で約半年間、研修を受けた後、去年の末から自分の畑を作り始めた。
今年4月に市が開校した「尾花沢すいか農学校」にも通い、新規就農者向けの栽培技術研修などを受講した。

(佐々見雄平さん)
「この『孫づる』を取ることで付けた(受粉した)という目印になるようにしてるんだと。要は『作業の共有』。いろんな人が入っても『これはきのう付けた』と分かるようにしているという知識は行った研修先では教わらなかったので、そういうのは学校に行って初めて知ることができた」

知り合いの少ない移住者にとっては、「農学校」に通うことは別のありがたさもとあるという。

(佐々見雄平さん)
「そこに行けば同じ作物を作っている仲間がいる。(スイカを)話のネタとして会話できる飲みに行って話することもできる」

(収穫して)
「初めてにしてはいいんじゃないですか」

市の担当者によると、この5年の間、尾花沢市には約50人の新規就農者が移住し、誰ひとり、離農して尾花沢を離れた人はいないという。

(佐々見雄平さん)
「頑張ってきて収穫した時、持ってみて『おおできた』と感極まった。まだたくさん学ぶことがあるが後継者も作っていくことも今後は視野に入れてしっかり(尾花沢すいか)を守り頑張っていきたい」

産地を守り、ブランドを継承していくには、新たな担い手の確保と活躍が欠かせない。

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