記者会見で次期自民党総裁選への不出馬を表明する岸田文雄首相=首相官邸で2024年8月14日午前11時37分、藤井達也撮影

 岸田文雄首相は自民党総裁選への不出馬を表明した記者会見で、党派閥の政治資金パーティー裏金事件に触れて「身を引くことでけじめをつける」と説明した。事件に関連して党から処分を受けた議員の地元関係者からは「政権がもたないと判断したのでは」などの声が上がった。

 4月に党の役職停止1年の処分を受けた萩生田光一前政調会長の地元・東京都八王子市。7月にあった都議補選で萩生田氏が支援した新人候補が敗れるなど、事件の影響が色濃く残る。

 党地元支部幹部の男性は不出馬の一報に「えー」と驚きの声を上げた。「逆風は今も続いている。総裁選で再選されても、その後の政権がもたないと判断したのではないか。党のためには岸田さんの判断に拍手したい。(低迷要因の)蓋(ふた)がとれて若い人材が活躍しやすくなり、国民の支持が上向くことを期待したい」と話した。

 「こうなるんじゃないかと思っていた」と語るのは松野博一前官房長官の地元・千葉県市原市の市議会で自民会派代表を務める保坂好則市議(57)。松野氏は党の役職停止1年の処分を受けた。裏金事件について「有権者の疑念はまだ払拭(ふっしょく)できていない」と厳しく受け止める。

 「聞く力」を看板にしていた岸田氏が突然、派閥の解散を言い出したころから「不信感があった」という。「下の人間は振り回されるし、党の考えをまとめられなかった。組織人としてどうだろうか」と岸田氏のリーダーシップに疑問を呈した。

 裏金事件を巡る処分で離党した世耕弘成前参院幹事長と、党の処分前の3月に次期衆院選への不出馬を表明して二階派会長としての「けじめ」を示した二階俊博元幹事長の地元・和歌山県。県連幹部は「有権者に『自民党は変わった』と思ってもらえるような総裁が選ばれて、区切りをつけてほしい」と話した。

 一方、党関係者の間では「和歌山は裏金事件の中心地とみられている」との思いが強い。この県連幹部は「県内の支援者からはいまだに裏金事件の説明が不十分だったと指摘される」と次期衆院選での逆風も覚悟していた。【野倉恵、浅見茂晴、駒木智一】

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。