米海軍と共同訓練を実施する海上自衛隊=1月29日~2月1日(海上自衛隊HPから)

岸田文雄首相は、米連邦議会上院下院合同会議での演説(11日)で、日本はかつて米国の控えめな地域パートナーだったが、今や「グローバル・パートナー」となったと述べ、「米国は独りではありません。日本は米国とともにあります」と力強く語った。それは何を意味しているのか。

「グローバル・パートナー」と称する以上、日本は自国の安全のみに関心を示す存在であってはならない。中国がいつ侵攻を仕掛けてくるか分からない台湾はもとより、少なくともインド太平洋について日本が主体性をもって米国とともに安全を確保しなければならない責任が生じたことになる。

米国と英国、オーストラリアによる安全保障協力の枠組み「AUKUS(オーカス)」と日本が、人工知能(AI)やサイバーなどの先端技術分野で連携することを日米共同声明に掲げたのは、そのことに関係する。やがて先端技術分野での連携だけでなく、安全保障自体の枠組みに日本が加わることも視野に入るだろう。

また、日本、米国、フィリピンの首脳会談で確認された3カ国による安全保障協力は、南シナ海の安全確保にも日本が責任を持つことを意味する。南シナ海は中国が不法に領有を宣言し、フィリピンをはじめASEAN(東南アジア諸国連合)諸国との間で日常的に衝突が生じている。今後は日本も「グローバル・パートナー」として責任を分担しなければならない。

以上は、いわば国際公約であり、それを実現可能にする国内法整備が必要となろう。

遅まきながら経済安全保障のための「セキュリティ・クリアランス法案」は衆院を通過した。特定秘密保護法の経済版だが、先のオーカスをはじめ同盟国・同志国との先端技術分野での連携が可能になる。今回は野党もメディアもおとなしいが、特定秘密保護法制定の際の大騒ぎは何だったのか。

憲法改正も必要となろう。安全保障で連携するにしても、自衛隊は憲法上の位置付けすらない。根拠法は自衛隊法と防衛省設置法だ。憲法明記は当然だが、今改めて憲法9条2項の「戦力の不保持」を維持したまま、インド太平洋の安全確保が可能なのかを考えなければなるまい。

自衛隊を他国の軍隊なみの組織とし、今は限定行使しかできない集団的自衛権をフルスペックで行使可能にすることだ。これらを真摯(しんし)に訴え、憲法改正を推進する。自由社会を守る責任ある「グローバル・パートナー」であるための裏付けが必要となる。

八木秀次

やぎ・ひでつぐ 1962年、広島県生まれ。早稲田大学法学部卒業、同大学院政治学研究科博士後期課程研究指導認定退学。専攻は憲法学。第2回正論新風賞受賞。高崎経済大学教授などを経て現在、麗澤大学教授。山本七平賞選考委員など。安倍・菅内閣で首相諮問機関・教育再生実行会議の有識者委員を務めた。法務省・法制審議会民法(相続関係)部会委員、フジテレビジョン番組審議委員も歴任。著書に『憲法改正がなぜ必要か』(PHPパブリッシング)など多数。

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