自民党派閥の裏金事件の舞台になった政治資金パーティー。本来、政治活動に必要なお金を集めるために法的に認められた催しだが、マイナスイメージを恐れ、一部では自粛が続いている。次期衆院選、来年夏の参院選を控える中、開催できないでいる国会議員側からは「収入がなくなり、(議員事務所の)誰かを解雇するしかなくなるかもしれない」と嘆きの声も聞かれる。
「これ、裏金のないパーティーですから。皆さんからご寄付をいただいて、こうして応援してもらわないと政治活動が続けられないんですわ」
今年3月、名古屋市長の河村たかし氏が市内のホテルで開いた自らの政治資金パーティーで、数百人の支援者らを前にそう語りかけた。6月にも自身が共同代表を務める「日本保守党」が1500人規模のパーティーを開催。河村氏は「政治的な活動費を作らんとどうにもならん」と、その必要性を訴える。
政治資金パーティーは、ホテルの宴会場や会議室などで開かれ、支援者らには「○○を励ます会」といった名称や勉強会などとして案内が届く。参加者は数十人程度から数千人を超えるものまであり、形態はさまざまだ。
企業などが大量にパーティー券を購入するだけで実際に出席する人が少なかったり、振る舞う飲食の量や内容を抑えたりすれば少ない経費で多くの収入が得られる。自民党派閥の裏金事件では、パーティー券の販売ノルマを超えた売り上げ分を議員側にキックバック(還流)しながら、政治資金収支報告書に記載せず裏金化していた。
だが、実情はこんなケースばかりではない。愛知県内に地盤のある自民党国会議員の関係者は「東京だと経費が数%なんて聞くけれど、こっちは土地柄、食べきれなくて残るぐらい料理を出さないと来場者に納得してもらえない。料理代がすごくかかるので、収入はほんのわずか」と打ち明ける。
県内選出の別の国会議員は、裏金事件発覚後、パーティー開催の中止を一時検討したものの「これまで通り法を順守し、開催する」と決めた。だが、支援者からは「この時期に本当にやるのか」「イメージが悪くなるのでは」といった声も上がったという。
7月上旬に開かれたこの議員の会には、約350人の支援者らがホテルの一室を埋め尽くした。メインは外部の実業家による講演会で、飲食の提供はペットボトルのお茶1本のみ。参加した60代女性は「議員本人に会って声をかけられる良い機会。個人で寄付をするよりも、こうした集いの方が参加しやすい」、支援者の男性(80)は「いわゆる『パーティー』と印象は違う。イメージも悪いから名称を変えた方がいいんじゃないか」と話す。
事件を受け、自民党愛知県連は今年の県連主催パーティーの中止を決定した。立憲民主党は、先の通常国会にパーティーの全面禁止法案を独自に提出。法案は否決されたが、同党所属で東海地方のある国会議員は批判を考慮し、年1回開いてきたパーティーを今年は開催できないでいる。
この議員の事務所関係者は「パーティー自体が悪いわけではないし、正直開催してもいいと思う。ただ、全面禁止を言い出した党として世間のイメージもあるし、なかなか簡単には再開できない」と明かす。
パーティーの収入は事務員の人件費などに充ててきたため、必要な経費は選挙のための蓄えを切り崩すなどして対応するしかないという。「このままでは最後の最後に誰かを解雇するしかなくなるかもしれない。自民党派閥の問題だったはずなのに……」とため息をつく。
徹底した透明化が必要
駒沢大法学部の富崎隆教授(政治学)は政治資金パーティーについて「お金の出入りが明確でなければ、『自分の懐に入れているんじゃないか』と国民が懐疑的になるのは当然のこと。資金をどこから集めてどう使ったか、徹底的に記録に残し透明化しなければならない」と指摘する。
6月には改正政治資金規正法が成立し、パーティー券の購入者公開基準が購入額「20万円超」から「5万円超」まで引き下げることが盛り込まれた。富崎教授は「半歩前進だが、まだ十分でない」とし、原則公開や現金でのやりとり禁止などの必要性を挙げた。
「『政治とカネの問題』の抜本的な解決にはほど遠く、単に『全面禁止』とするだけではパフォーマンスとしかみなされない。選挙競争の枠組みである公職選挙法の改正を含めた抜本改革が必要で、その中で政治資金のあり方を変革することが求められる」と話す。【加藤沙波、荒川基従、川瀬慎一朗】
政治資金パーティー
政治家や政治団体が、個人や企業などにパーティー券を売って政治資金を集めることが主な目的。政治資金規正法で定められ、収入から会場費や飲食代などの経費を差し引いた残額を、政治活動に充てることが認められている。
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。