大分県日出(ひじ)町の町有地にイスラム教徒の土葬墓地を建設する計画を巡り、25日投開票の同町長選で初当選した元町議の安部徹也氏(56)は26日、地元のイスラム教徒団体に町有地を売却する手続きを許可しない考えを明らかにした。団体側の構想に対して水質汚染などを懸念した住民が反発する中、4年以上かけて団体側と住民が合意にこぎ着けた計画は白紙に戻る可能性が高まった。
26日に町内で記者会見した安部氏は、町議時代から墓地建設の許可手続きが不透明だと指摘し、反対してきたことを挙げた上で「売却は許可しない予定で考えている」と述べた。町長選では、3選を目指した現職の本田博文氏(71)に対し約1・8倍となる8037票を得て初当選。公約には掲げなかったものの、墓地建設に反対の立場を取ってきたことが、反対派を中心に支持を集めた格好だ。
イスラム教徒にとって火葬は禁忌。土葬墓地は大分県別府市の宗教法人「別府ムスリム協会」が2018年12月に町内に約8000平方メートルの土地を購入し建設しようとしたが、住民が水質汚染などを理由に反対して頓挫。町は町有地(約4900平方メートル)を代替地として提案し、その後の審査で建設を容認したが住民の反発は収まらなかった。このため、協会側が23年、年1回の水質検査や墓地面積を広げない――などの条件を住民側に提示し、建設の合意にこぎ着けた。
土地は、町が算定した評価額を協会側が受け入れれば売買契約が成立する予定だったが、まだ手続きの途中で契約は成立していないという。協会のカーン・タヒル代表は、毎日新聞の取材に対し「まだ町から連絡はない。選挙が終わったばかりなので、よく分からない」と話した。【神山恵】
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