パワーハラスメントなどの疑惑について追及を受ける兵庫県の斎藤元彦知事(46)は30日、県議会の調査特別委員会(百条委)の証人尋問で、大声で職員を叱責したとの指摘について「いま思えば申し訳なかった」としつつも、あくまで指導としての正当性を主張した。一方、叱責された職員は「必要な範囲の指導とは思えない」と証言した。
宣誓した後、証人席に着いた知事は、委員からの質問に淡々と答えた。元県西播磨県民局長の男性(7月に死亡)が作成した告発文の存在を把握した時の心境について、「どうして一緒に(仕事を)してきた人が(文書を)まいたんだろう、悔しい……」と口にし、「つらい、悲しい思いがあった」と言い直した。こうした思いが、3月の定例記者会見で文書について「うそ八百」と非難したことにつながったと説明した。元局長は5月に停職3カ月の懲戒処分を受けている。
30日の百条委では、告発文で指摘された「出張先で20メートルほど手前で公用車を降りて歩かされたことに立腹し、職員らを怒鳴った」との事案について、現場に居合わせた野北浩三・県東播磨県民局長が公開で証言した。車止めの手前で公用車を止められた知事はいきなり、「なぜ(車止めを)どけておかなかったのか」と叱責したという。局長は「理不尽な対応で、頭が白くなった」と振り返った。
これについて知事は、車の進入禁止エリアだと知らなかったため「車止めを取り忘れたと思って大きな声で注意した」と弁明。当時の局長らの対応は不十分で、自身の指導や認識は「合理的だった」と主張する一方、「今考えると申し訳なかった」と謝罪した。
また、証人として出席した杉浦正彦・県まちづくり技術センター理事長は、県土木部幹部だった2021年、地元紙が25年大阪・関西万博の県関連事業を報じた際、知事から「意思決定していないものを先に出すのは許せない」と机を1、2回たたいて叱責されたと説明。杉浦氏は「(机をたたくのは)指導としては必要ないと思う」と述べた。
これに対し、知事は「新聞を読んで朝、車中で『なんなんこれは』と思った。『こういうことは報告していただかないといけないんじゃないですか』と伝え、思わず机をたたいてしまった」と認めた。一方で「知事就任直後で自分が知らないところで業務が進められようとしている不安を強く抱いた。行為としては適切ではなかった」としつつ、「パワハラに該当するかは百条委などで判断してもらいたい」と述べた。
百条委終了後、斎藤知事は報道陣に「県政を進めていきたい」と改めて辞職を否定した。
政治ジャーナリストの角谷浩一さんは「知事は自分は悪くない、正しいというのを前提にしていると感じた。正しさや合理性だけでは物事は進まないし、相手の思いを量れないのは自治体のリーダーとして相当物足りない。行政の停滞や県民不信を招き、職員の信頼を得られていないことへの責任感を政治家として持つべきだ」と話した。【稲田佳代、大野航太郎、矢追健介】
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