オンデマンド型移動期日前投票について審議されたつくば市選挙管理委員会=茨城県つくば市役所で2024年9月2日、信田真由美撮影

 茨城県つくば市の選挙管理委員会が2日開かれ、10月27日投開票の市長・市議選での「オンデマンド型移動期日前投票」導入を見送ると決めた。委員4人の全会一致。市に検討を求められていたが、10月下旬~11月上旬に衆院解散による総選挙が行われる可能性がある中で、選管の事務量が増加する可能性などを考慮した。今後の選挙での導入は引き続き検討する。【信田真由美】

 市が導入を目指していたのは、事前に申請した移動困難な高齢者や障害者の自宅を、投票箱を載せた車が期日前に巡回する仕組み。障害者や高齢者の投票機会の確保が狙いで、市は8月6~9日に市内全域での実証実験を行っていた。

 市によると、対象は福祉施設に入居していない要介護3以上の高齢者や重度障害者ら約3000人。実証実験では35軒を回り、51人が参加した。

市内全域で行われた移動投票の実証実験=茨城県つくば市洞下で2024年8月6日、信田真由美撮影

 委員会で市は、実証実験では大きな遅れもなく「準備は整った」と強調。ただ同時期に投開票と決まった場合は衆院選でもオンデマンド型投票を行うか委員から質問されると、「事前準備に2カ月かかるので、解散してすぐに選挙となる衆院選では間に合わない」とした。

 こうした説明を受け、南文男選管委員長は「衆院選と同時になると事務的に煩雑になる。(同時期に投開票する)選挙で対応が分かれるのも良くないことで、市民に説明できない」と話した。

 重度障害者らには郵便投票が認められているほか、市が新たに始める期日前投票所までのタクシー代助成制度もあり、委員からは「郵便投票を使いやすくするなど、新しい制度を作るより今の制度をよくできる検討を深めた方がいいのでは」という意見も出た。

 五十嵐立青市長は「障害があっても一票を投ずることを諦めないでいい状況を作るために努力してきたが、このような結果となって大変申し訳ない。根本的な問題はなんら解決されていない」とするコメントを発表した。

ネット投票断念の代わりだったが…

 つくば市は2022年、規制を緩和し先端技術を活用する特区「スーパーシティ」に指定され、今回の市長・市議選でインターネット投票の実現を目指していた。しかし公職選挙法改正などの課題が多く断念。代わりにオンデマンド型投票の導入を模索していた。同様に投票者の自宅まで巡回した例は、23年統一地方選での北海道士幌町の対応がある。

 市は当初、坂道が多く投票所が離れている筑波山麓など一部地域での実施を見込み、1月に実証実験を行った。しかし今春の選管委員会で、複数の委員から「公平性確保のため、実施するのであれば全市を挙げて取り組むべきだ。検討すべき事項が多く、今秋の導入は時期尚早では」と指摘され、8月に全域での実証実験を行った。

 2日の選管委員会で市は「(実証実験で)投票所に行きたくても行けない人が可視化された。最終目標は自宅でインターネット投票をできるようにすること。つくば市で取り組みを続け、ボトムアップで国に声を届けていくことは非常に重要」として、改めてネット投票を目指す方針を示した。

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