岸田文雄首相は4日、働き手のリスキリング(学び直し)を後押しするため、「教育訓練給付」制度の拡充を表明した。自動車運送や建設、介護などの業界団体による民間検定を政府が認定し、受検講座を「今秋から新たに給付対象に追加し、支援する」と述べた。人手不足が深刻な業種への労働移動を促す。
働く人が新しいスキルを学ぶ重要性を考えるシンポジウム「日経リスキリングサミット2024」(日本経済新聞社主催)に出席し、特別スピーチに登壇した。
首相は「(2022年に)初めてこのサミットに出席した当時はまだリスキリングという言葉自体が、日本の経済社会で十分定着していなかった。この間の変化は大きなものがあった」と振り返った。
そのうえで「個人のリスキリングを直接支援する施策の強化や、生活を維持したまま推進する環境整備を進めている」と述べ、政府の取り組みを説明した。
教育訓練給付は厚生労働相が指定する講座を修了した際に受講費用の一部を支給する仕組み。5月に成立した改正雇用保険法で10月から、給付率を最大70%から80%に引き上げる。
雇用保険の基本手当(失業給付)も受けやすくなる。25年4月から自己都合退職の場合でも在職中にリスキリングに取り組んでいれば、失業給付がもらえない給付制限期間(現在は2カ月、来年4月から1カ月)なしに受給できるようになる。
首相は雇用機会や人材の不足といった地方経済が直面する課題について「乗り越えるために必要なカギが『地方』と『成長産業』の掛け算にある」と語った。
半導体世界大手の台湾積体電路製造(TSMC)が進出し、半導体エンジニアなどの人材育成施設が設けられた熊本県など各地の取り組みに言及した。
成長産業でのリスキリングは「企業の成長や賃上げ、雇用の拡大の大きな機会になる。地方経済の成長につながると期待する」と強調した。
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