9月27日に投票が行われる自民党総裁選は、12日の告示に向け立候補表明が相次いでいます。自民党総裁選や23日に投票が行われる立憲民主党の代表選について、注目点などをジャーナリストの立岩陽一郎さんに聞きました。
自民総裁選 出馬ラッシュ
自民党総裁選は9月12日に告示 27日に投票が行われる予定で、ポスト岸田をめぐる動きは、日に日に激しさを増しています。
こうした中、3日に林官房長官が出馬表明の記者会見を開きました。
林芳正 官房長官:
この度、この難しい状況の中ではありますが自民党総裁選挙への出馬を決意させていただきました。議員生活30年になりますが持てる経験と実績をすべて出して、この国のために使わせていただきたい
4日は茂木幹事長、6日に小泉元環境相が立候補を表明し、出馬ラッシュとなる見通しです。また、高市経済安全保障担当相は9日に表明する予定です。
「自民党が変わるなら上川外相」
ここからはジャーナリストの立岩陽一郎さんに総裁選について聞いていきます。総裁選に立候補の意欲を示しているのはこちらの12人です。
すでに立候補を表明しているのは、小林前経済安全保障担当相、石破元幹事長、河野デジタル担当相、そして、3日は林官房長官が立候補会見を開きました。また、この中で、静岡市選出の上川外相は推薦人確保に向けて動いています。
-全体の顔ぶれと、気になった事などありますか?
立岩陽一郎さん(大阪芸大短大教授):
自民党のトップを決める選挙で私たちには投票権もないので、距離を置いて見た方がいい。派閥を解消したといっても何となく代わり映えしない印象。
もし自民党が変わるなら誰なのかという観点でみれば上川外相があるのかなと、個人的には思う。上川外相は地味だけど地道にやっている政治家としての姿勢はこの中で突出していると思う。推薦人を集めるのは難しいと思いますが。
支持と推薦の大きな違いを実感
静岡県民として気になるのは、静岡1区選出で初の女性総理を目指す上川陽子さんの動向です。
自民党総裁選に立候補するには国会議員20人を推薦人として集めることが必要です。
上川陽子 外相(8月29日):
推薦人になって頂くというのは、その方の政治家としての強い姿勢を示すものなので大変重い決断であること、これまで支持と推薦との間にこんなに大きなギャップがあることを改めて実感している
9月2日は支援する議員たちと3回目の会合が行われました。
上川陽子 外相(9月2日):
体当たりで誠心誠意、お会いして訴えています。この部分をさらにつないでいきたいと思っていて、その先の明るい見通しとしてスタートラインが見えてきた、そんな思いです。一生懸命、厳しい状況ですが先を見すえて頑張っていきたい
いまは上川外相にとって政策論争に入れる段階ではないようです。記者から「憲法改正についてどのように取り組んでいくか?」問われると…。
上川陽子 外相(9月2日):
いま私自身が推薦人を集めるということで、立候補できるかどうか本当にギリギリ、土俵に乗れるかどうかというところなので、いろいろなことについて対話をしながら大事に進めたい。機会が来たならしっかり発言したい。いまはとにかく(スタート)ラインが見えないとその先は進めないので、必死にいろいろな先生方とお会いして訴えさせていただいている
ただ、3日には進展をうかがわせるような発言に変わりました。
上川陽子 外相(9月3日):
少しメドが立ってきたと思っています。表明についてどこでどういう時間帯でやるか、応援して頂いている議員とよく相談しながら調整していきたいと思い お願いしている
「言葉を尽くして説明する人を」
支持するというのと推薦人になるのは大きな壁があるようです。
-上川さんの現状をどう見ていますか?
立岩陽一郎さん:
(上川さんは)「支持と推薦のギャップに苦しんでいる」と正直に言ってしまう、包み隠さず話す人だと思う。それをどう評価するか、私はそういう普通の感覚は大事だと思う。
小泉政権は「ワンフレーズポリティクス」で、国民に受けるワンフレーズを言って支持を得た。上川さんは対照的にものすごく丁寧に説明する。
岸田総理は「自民党の刷新のため総裁選不出馬を決断とした」と言ったが、本当にそうならこれまでのような「ワンフレーズポリティクス」ではない「地味だけど言葉を尽くして説明する政治家」にリーダーシップを与えていいのでは
派閥の論理は影響する?
そして、今回どこまで影響あるのか注目されているのが派閥の論理です。
裏金問題をめぐって各派閥が解消へ向かう中、唯一残るのが麻生派です。その麻生派の研修会が8月27日に開かれています。
1993年に自民党総裁をつとめた河野洋平 氏。父と同じ総裁の座を目指す長男の河野太郎さんは今回が3度目の挑戦になります。その河野さんが籍を置くのが自民党で唯一残る「麻生派」です。
麻生太郎 自民党副総裁:
ポスト岸田を考える時に、我々の仲間として長いことやってきた河野太郎が出馬表明を行っています。
この志公会(麻生派)の目的の1つは、日本の舵取りを担えるような政治家を育成したいという初期の目的が書いてある。その志公会で育ち、同じ釜の飯を食って育ってきた河野太郎を同志としてしっかり応援していきたい。
「一致団結、箱弁当ではない」が 縛りに
2025年で70年となる自民党の歴史。トップに就く総裁は、そのほとんどが国の舵取りを担ってきました。
麻生太郎 自民党副総裁:
昭和30年(の結党)・第1回の自民党総裁選挙から1つの選挙で11人も候補者が立った例は1回もありません。派閥がなくなったおかげです、良かったかどうかは知らないよ。
麻生副総裁は、多くの立候補者が出る今回の選挙について「一緒に一生懸命やりたい人がいたらやれば良い。信念を大事にしてほしいと」とした上で…。
麻生太郎 自民党副総裁:
こういう大会を開いて、一致結束(箱)弁当みたいに縛り上げるつもりは全くありませんし、河野太郎もそれを期待しているわけではありません。
ぜひみなさん、志を同じくしている人は気持ちをなるべく一致させることができるのであればそれに勝るものはない
今のVTRの中で気になる言葉がありました。それが「一致結束、箱弁当」です。
これは自民党の各派閥が毎週木曜日に集まり、昼ご飯を一緒に取るのが伝統だったことに由来する言葉で、団結の証とも言われてきました。
今回、麻生副総裁は「一致結束、箱弁当ではない、縛りあげるつもりはない」と発言しています。
-麻生副総裁発言の真意と、今回の派閥の動きどう見ています?
立岩陽一郎さん:
政治家はウソつきですから。あえて言うのをどう読み解くかですが、私は派閥は無くならないと思う。総裁選をやる以上、誰を推すかを考えていくので、名称は政策集団としても派閥的な結びつきは起こると思う。
麻生さんが敢えて「一致結束、箱弁当ではない、縛りあげるつもりはない」と言えば、それが縛りになる
「立憲民主党の代表選こそ注目を」
そして今回もう1つ注目したいのが9月23日に予定される立憲民主党の代表選挙です。野党第1党の立憲民主党の代表選も日程が迫っています。
これまでに枝野幸男 前代表が立候補を表明し、泉健太 代表も出馬に向けた意欲を見せてきました。
また、野田佳彦 元首相が自民党総裁選に注目が集まることに危機感を見せ、小沢一郎 議員が野田氏支援の方針を固めました。
野田佳彦 元首相(立候補を表明):
すぐに解散総選挙、逃げるな自民党という戦いに
吉田晴美 議員(立候補に向け調整):
(推薦人確保は)最後の一押しのところまできています
代表戦には、当選1回の吉田晴美 議員と江田憲司元代表代行も、立候補に向けた調整を続けています。
-立憲民主党の代表選をどうみますか?
ジャーナリスト・立岩陽一郎さん:
自民党総裁選で選ばれた人物が日本の首相になるわけですが、これは自民党が国会で圧倒的多数を占めているからで、これが諸悪の根源であると思う。派閥の裏金問題が大きくなったとしても、結局、自民党の中の問題で済んでしまう。
(こうした状況を踏まえ)立憲民主党は本当に党を束ねられる人を選ばないといけない。立憲民主党をしっかりと根の張る組織としていけるかどうか、ある意味、自民党の総裁選以上に注目しなければいけない
自民党、立憲民主党のトップを決める選挙はこれからの日本がどうなっていくのかの大きな転換点になるのかもしれません。ここまで総裁選についてお伝えしました。
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