生活保護業務を担当していた茨城県つくば市職員が、不祥事が相次ぐ元職場の業務内容の適正化を求める請願書を9月議会に提出した。市議会は3日、議論する特別委員会を設置した。

 生活保護業務を扱う社会福祉課では今年度になって、一部職員への時間外手当の未払いや、障害者への生活保護費の誤支給などが明るみに出た。請願書を出した職員は、今春までこの課に在籍していた。

 請願書で職員は、「不適正事案の具体的な内容や、発覚の本当の経緯が示されていない」などと指摘。在任中に労務環境の改善などを訴えていたが、管理職から「逆ハラスメント」と言われて敬遠されたとも主張している。また、「公の奉仕者として、市民の信頼にこたえたい」として、組織の根本的な改革を求めた。

 請願書の内容が福祉保健、総務文教の二つの委員会にまたがるため、市議会は両委員会の議員13人でつくる特別委員会(長塚俊宏委員長)を設置した。

 また、この職員とは別の元担当者も、公益通報の実効性を担保できる外部窓口の設置などを求める陳情書を9月議会に出した。(鹿野幹男)

     ◇

 つくば市は7月、10年以上にわたり、障害者20人に生活保護費の加算金計約1360万円を誤って多く支給したと公表した。発覚の経緯について「今年2月、県からの状況確認で判明した」としているが、実際にはもっと早く改善できたはずだった。

 市や県によると、このミスが判明する4年前の2020年1月、会計検査院が加算認定に必要な解釈について、当時の管理職や担当者に指導していた。市は「(管理職らが)指導の内容を理解していなかった」と説明している。

 内部でも是正を求める動きはあった。関係者によると、22年11月、管理職らが出席した会議で、社会福祉課の職員が加算認定の誤りを文書で報告した。対象者に経緯説明とミスの謝罪をすることや、対応策を提案したが、職場で共有されることはなかった。

 取材に対し、根本祥代福祉部長は文書の存在を認めた上で、「数年前のことで事実確認が難しいが、実態の調査を進める」と答えた。

 時間外手当未払いの責任をとって給与を減額した五十嵐立青市長は先月8日の会見で、「(一連の不祥事は)同じ部署で起きたこと。きちんと調査する」と述べた。

 それから10日余りたった21日には、新たなミスが明るみに出た。23年度までの10年間にわたり、生活保護費に絡む国庫負担金の請求を怠っていた。このケースでも昨年、職員がミスを管理職に報告していたが、放置されていた。(鹿野幹男)

     ◇

社会福祉課をめぐる不祥事の経緯

20年1月 会計検査院が生活保護費の障害者加算を巡り市を指導

22年11月 課の職員が障害者加算の誤りを職場内で指摘

23年12月 情報提供を機に、障害者加算の誤りなどを県が把握

24年1~2月 県が課の状況を確認

  5月 一部職員への時間外手当未払いを公表

  7月 障害者加算などの誤支給を公表

  8月21日 10年間分の国庫負担金の請求漏れを公表

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。