自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件後、初めてとなる党総裁選では、「党員票」が勝敗の鍵を握るかどうか注目されている。混戦模様で「議員票」が分散して党員票の重みが増していることに加え、国民の政治不信を深めた事件があったのに、国会議員が「数は力」とばかりに「永田町の論理」で民意に背く投票行動を取れば、さらなる失望を招きかねないためだ。議員らは党員票の行方に神経をとがらせる。(我那覇圭、川田篤志)

自民党本部に掲げられた総裁選の垂れ幕=2日、東京・永田町で

 「今回ばかりは、党員票で1位の人を文句なしに当選させてほしい」。東海地方の自民県議がこう訴えるのは、決選投票の際に国会議員らが水面下で事前調整を行い、党員らの支持を集めた候補者を退けることが繰り返されてきたからだ。

◆「国民の声に近い」票なのに「派閥の力学」で逆転

 2012年の総裁選では、石破茂元幹事長(67)が党員票で圧倒的にリードしていたにもかかわらず、決選投票で派閥領袖(りょうしゅう)らの多数派工作に遭い、安倍晋三元首相に逆転された。前回の2021年も党員票でトップに立った河野太郎デジタル相(61)が岸田文雄首相に敗れた。多様な党員らの票は「国民の声に近い」(閣僚経験者)とされるが、派閥の力学が優先され、軽んじられてきた。  今回の総裁選には、11日までに過去最多の9人が立候補を正式に表明。候補乱立で投票先が割れ、1回目の投票で過半数を獲得できず、決選投票にもつれ込む公算が大きい。各種世論調査の支持率で1、2位につける石破氏と小泉進次郎元環境相(43)が党員票で有利とみられる。

◆「議員票が党員票の結果をひっくり返したら…」

 一方、裏金事件後も影響力を残す派閥があり、これまでのように派閥同士の打算が決選投票の勝敗を決する可能性もある。党内からは「裏金事件で信頼を失っている中、議員票で党員票の結果をひっくり返すような事態を再び招いたら、この党は終わる」(中堅議員)と行方に気をもむ声が絶えない。  党員投票の対象者は、全国に約105万人いる党員や党友だ。衆参両院の党所属議員計367人と同じ367票分が割り当てられ、得票の多い候補者に比例配分される。26日までに投票は締め切られ、27日の議員投票と合わせて結果が発表される。総得票で過半数に達した候補者がいなければ、上位2人が議員票の重みを大きく増やした決選投票に進む。 

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