討論会に臨む自民党総裁選の9候補(14日、東京都千代田区)

自民党総裁選に立候補した9人の討論会の要旨は次の通り。

冒頭発言

高市早苗氏 国の究極の使命は国民の生命と財産、領土・領海・領空、資源、国家の主権と名誉を守り抜くことだ。外交力、防衛力、経済力、技術力、情報力と何より人材力を強くするためには強い経済が必要だ。経済成長を追い求める。

小林鷹之氏 日本を世界から信頼されるだけでなく、必要とされる国にする。国家運営の基本の経済と安全保障、それを支えるイノベーション、人づくりの教育をバランスよく高めていくことで国力を増やし、世界をリードする日本をつくる。

林芳正氏 実感できる経済再生を実現したい。新しい資本主義、成長と分配の好循環で、実質賃金をプラスにできた。この流れを確かなものにしなければならないが、本当に国民に実感されているか。しっかりと目配りをしていきたい。

小泉進次郎氏 総裁選は自民党が変われるのかどうかが問われる。政策活動費を廃止し、旧文書通信交通滞在費(調査研究広報滞在費)の公開を義務化する。不透明なお金の使い方を断ち切る。政治改革を断固たる決意で進めていく。

上川陽子氏 国際社会で誇りと存在感のある国にするため、孤独や孤立の中で取り残されている一人一人の声に耳を傾ける。国民の参加と協力、理解を得ながらこの国を前に進めたい。誰一人取り残さない新しい日本の景色をつくる。

加藤勝信氏 国民の所得倍増を命がけで実現する。企業の利益や内部留保を活用して賃上げを起点とした好循環を生み出す。賃上げにつながる政策を徹底し、新産業の支援を進める。同一労働同一賃金などを通じて労働分配率を引き上げる。

河野太郎氏 日本は自由主義、市場経済の国だ。政府の仕事は公平な競争の場をつくり、民間の活力を解き放つ改革をすることに尽きる。これまで押印の廃止などの改革を実現した。日本の経済が発展したと言われるような改革を断行する。

石破茂氏 総裁選では「全ての人に安心と安全を」との主張を掲げた。大勢の人が不安の中にいる。能登半島地震があった。人口が減る。医療、年金、介護は大丈夫か。今が良ければ良いという話にならない。将来を示すのが政治の役割だ。

茂木敏充氏 日本は物価高や人口減少、安全保障環境の課題に直面している。国民には負担増への不安が高まっている。増税ゼロの政策を推進して経済を再生し、所得を上げていく。海外のリーダーと向き合い、国益を守り抜き、結果を出す。

討論会に出席した自民党総裁選の9候補(14日、東京都千代田区)

質疑応答

【政治資金問題】

質問者 政策活動費は何に使っているのか。

茂木敏充幹事長 党勢拡大や調査研究、広報活動を中心に使っている。政治資金規正法を改正しなくても、党の判断で政策活動費の項目を設けず、表に出す形の経理処理を行いたい。

加藤勝信元官房長官 廃止というのは結果的に違う費目に行くだけだ。

質問者 最初は2〜3年後の公開としていたが、1年後に変わった。

小林鷹之前経済安全保障担当相 毎年公開できなければ、いっそのこと廃止していい。

質問者 派閥の政治資金問題を巡り、報道や裁判で新事実が出ている。

高市早苗経済安保相 新たな事実が出たら再調査する。新総裁がいったん決まった議員への処分をひっくり返したら独裁だ。

林芳正官房長官 新しい事実が判明したら処分を見直す。

【政治姿勢】

小林氏 選択的夫婦別姓制度の導入は慎重であるべきだ。旧姓の通称使用が最も現実的だ。

上川陽子外相 個人的には賛成の立場だ。プロセスを深め、時間をかける態度が必要だ。

質問者 臨時国会で予算委員会を開かずに衆院を解散するのか。

小泉進次郎元環境相 早く国民に信を問うた政権運営をしなければ、どんな政策も前に進まない。

石破茂元幹事長 すぐ解散します、という言い方はしない。

【外交】

河野太郎デジタル相 パレスチナを国家承認すべきだ。

上川氏 直ちに国家承認するかは、しっかり検討しないといけない。

質問者 日本製鉄のUSスチール買収が止められそうになっている。

高市氏 鉄鋼業界の体力を、日米で力を合わせて強めることが本来の目的だ。

小泉氏 日米が共に向き合う課題だ。米大統領選の最中に過剰に反応するのは外交的なセンスが疑われる。

質問者 トランプ前大統領が再登板した場合、日本は防衛上の負担増を迫られるのではないか。

石破氏 誰が大統領になっても数字で議論すれば日本の主張は認められる。

質問者 次期米大統領とどんな関係を築くか。

茂木氏 次期大統領が決まれば就任前にすぐ会いたい。

質問者 日中関係をどうマネジメントするか。

小林氏 受け身でなく戦略を持ち向き合うべきだ。日米同盟の抑止力を強化して対処する。中国の国力を日本の国益に活用する視点で付き合うべきだ。

質問者 林氏は親中派として知られる。強硬な態度に出にくいか。

林氏 私は「知中派」だ。中国と仲が良いからといって、譲ったことはない。

小泉氏 トップ同士で話さない限り、懸案の前向きな打開はない。

河野氏 同志国と共同戦線を張る。

質問者 日朝関係はどうするか。

小泉氏 トップの父親同士が会っている。同世代同士で新たな対話機会を模索する。

【安全保障】

石破氏 アジアで集団安全保障を模索していくべきだ。

茂木氏 欧州と異なりアジアは多様な価値観、体制の国がある。現実的ではない。

石破氏 米豪ニュージーランドに日本を加えるのも理論的には可能だ。

【追加利上げ】

質問者 日銀の追加利上げや物価安定目標の達成に違和感はあるか。

高市氏 若者が住宅を買いにくくなったり、企業が投資をためらったりしてはいけない。低金利を続けるべきだ。

【増税ゼロ】

質問者 増税ゼロはいつ実現できるか。

茂木氏 基本的に3年以内で考えている。半年以内にデフレから脱却できる。

【財政規律】

質問者 財政規律を重視すれば、日本経済がデフレに逆戻りするとの批判がある。

河野氏 調子よく借金をして、お金を使ったからといって、経済が果たして成長するだろうか。

【解雇規制】

質問者 小泉氏の方法は大企業優先であり、非正規雇用が増える。整理解雇の4要件の見直しをするのか。

小泉氏 ずっと言っているのは解雇規制の緩和ではなく見直し。企業が働き方に対し、きめ細かい対応をするようになれば、正規社員を雇いやすい労働市場の環境になる。

石破氏 整理解雇の4要件を精査し、条文化作業を急がなければ、イメージが分からない。

【ライドシェア】

高市氏 ライドシェアの全面解禁は交通安全上の問題や、強盗などの犯罪被害に遭う恐れがある。

小泉氏 ドライバーの客からの評価が利用者に分かる仕組みになっている。安全対策を講じた上で、移動手段の不足を解消するために全面解禁に取り組む。

【社会保障】

質問者 社会保障改革ではどの候補も負担に触れていない。

高市氏 あくまで経済成長を最優先し、税収を増やす。

小林氏 社会保障未来会議を立ち上げ全ての選択肢をのせる。

上川氏 給付と負担の関係の見直しは極めて重要だ。

【マイナ保険証】

質問者 河野氏は、マイナンバーカードに保険証機能を持たせたマイナ保険証への一本化を唐突に表明した。

河野氏 最終的に岸田文雄首相が了解した。一番批判を浴びやすいところを受け持ってきた。

質問者 健康保険証の新規発行が12月に終了し、マイナ保険証を基本とする仕組みに移行する。時期を見直す可能性は。

林氏 廃止と言わず、新規発行がなくなると丁寧に説明するだけで、かなり不安は解消する。

加藤氏 廃止という言葉がやや重たい。(発行済みの保険証は)引き続き使える。

【原発政策】

小林氏 安全性が確認された原発の再稼働、リプレース(建て替え)、新増設に取り組むべきだ。どのように電力供給を確保していくか。

石破氏 東日本大震災で原子力災害はいかに恐ろしいかを思い知った。再生可能エネルギー、地熱や小水力発電も進めれば、結果として原発のウエートを下げることになっていく。

質問者 河野氏はかつて脱原発を掲げていたが、旗を降ろしたのか。

河野氏 データセンターと人工知能(AI)が入り、電力需要が右肩上がりになる予測がある。前提条件が大きく変わったので、現実的な対応策を考える必要がある。

【防災省】

林氏 防災省の具体的なイメージは。

石破氏 防災担当を拡充する形で、内閣府の外局として防災庁をつくる。自衛隊や警察のみならず、各省庁を含めた最終形が防災省だ。

林氏 防災庁をつくるよりノウハウを蓄積し、有機的につながる。まず議論するのが現実的だ。〔共同〕

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