自民党総裁選(27日投開票)は19日夜、東京・秋葉原で候補者9人による街頭演説会を開催した。秋葉原は安倍晋三元首相らが多くの支持者を動員した「聖地」でもあり、反対派との「衝突」で物議を醸したいわく付きの場所でもある。ただ、その安倍氏は22年夏に死去。派閥の政治資金パーティー裏金事件などで政治不信は高まっており、かつてのような熱気は感じられなかった。
麻生、安倍氏…いつしか「締め」に定着
会場のJR秋葉原駅前のロータリーには午後3時ごろから、多数の制服・私服警官が出動して厳戒態勢が敷かれた。警察犬も動員され、付近は物々しい雰囲気に包まれた。
秋葉原での街頭演説はもともと、2006年9月の自民党総裁選の演説会場になり、候補者で漫画好きで有名な麻生太郎外相(当時、現副総裁)が開口一番「自称『秋葉原オタク』の皆さん」と呼び掛け、聴衆の笑いを誘ったことなどから知られるようになった。
12年末から7年8カ月続いた第2次安倍政権では、大型選挙の締めくくり演説の場に定着。若者を中心に1万人近い聴衆が集まり熱狂的な支持をアピールした。
「反・安倍氏」も集まるように
森友・加計学園問題が発覚してからは「安倍やめろ」などのプラカードを掲げたグループも集まるようになり、世論の分断も印象づけた。安倍氏が「こんな人たちに負けるわけにはいかない」と発言して批判を浴びた因縁もある。
自民党が組織的な街頭演説を秋葉原で実施するのは19年7月の参院選以来、約5年ぶり。この日も選挙カーの上から各候補者が自らへの支持を必死に呼びかけた。主催者発表で5000人が集まった。
今回の盛り上がりはイマイチ
ただ、各陣営が動員したとみられる関係者の姿も多く、以前のように通行人が足を止めてロータリーが人であふれるような事態にはならなかった。
各候補者は一様に、中国・深圳で日本人男児が刃物で刺され死亡した事件を受け、中国政府に真相究明や再発防止を求める姿勢を強調したが、盛り上がりはイマイチ。「安倍人気」にはなかなか及ばない様子だった。
自民党関係者は「不祥事が多く、政治への関心そのものが下がっているのだろう」と言葉少なだった。【村尾哲、森口沙織】
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