議会から満場一致で「退場宣告」を受けた瞬間も、孤独なトップは表情を変えることなく、真っすぐ前を見つめていた――。パワーハラスメントなどの疑惑について追及されている兵庫県の斎藤元彦知事は、19日の県議会で不信任決議を受けた直後も、進退や今後の方針について明言を避けた。元県西播磨県民局長の男性(7月に死亡)による疑惑の告発から半年。先が見えない県政運営に、県民からも厳しい批判が出ている。
「斎藤元彦兵庫県知事に対する不信任決議案は可決されました」。午後5時半すぎ、県議会本会議場で浜田知昭議長が投票結果を伝えると、拍手が湧き起こった。黒いスーツ姿で背筋を伸ばした斎藤氏の表情から、胸の内を読み取ることはできなかった。
その直後、報道陣の取材に斎藤氏は「大変重い議会の選択だ。県にとってどういうことが大事か、自分の中で問いながら考えていきたい」とし「今の状況を招いたのは私に責任がある」と陳謝した。
不信任決議により斎藤氏は10日以内に議会を解散しないと、失職することになる。今後の選択については「(判断する)タイミングはまだ。しっかり考えて決断し、改めてお伝えしたい」と述べるにとどめた。
この日も普段と同様、午前10時ごろに登庁。取り囲んだ報道陣に「私の思いはしっかり改革を進めていくこと。県民の負託で4年間しっかりやってということなので、(任期いっぱい)やっていきたい」と続投に意欲を見せた。
同11時には県議会本会議で、県が提案した補正予算案などについて説明。一連の問題に触れ「百条委(県議会調査特別委員会)や第三者委に誠実に対応し、説明責任を果たしていくこと、そして反省すべき点、改めるべき点をしっかり受け止め、信頼回復に向けて最大限の努力を重ねていく」と語った。
一方、議会側はこれまでの方針通り、まず予算案などを審議・採決。午後3時すぎ、自民党県議が議場で「議長!」と叫び、知事の不信任決議案を審議する緊急動議を出した。休憩を挟み、全会派・議員一致で決議案が共同提案された。
賛成討論で、立憲民主党の県議らでつくるひょうご県民連合の迎山志保県議は「職を辞すことで県民の信頼や期待を裏切ったことへの責任を果たしていただくことを強く求める」と要求。第2会派・維新の会県議団の徳安淳子県議は「(2021年の知事選から)3年あまり、まさかこのような日を迎えるとは夢にも思わなかった。まだ将来のある知事自身のためにも、まずは県民に信を問うことこそが近道であり、県民のためだ」と、辞職と出直し選を求めた。
続いて記名採決に移り、定数通り86人全員が「不信任」を意味する白札を投じた。閉会後、浜田議長は「知事が県民の思いをしっかり受け止めて判断するのがベター。解散について大義があるか判断してほしい」。最大会派・自民県議団の北野実幹事長は「議会の解散には大義がない。粛々と有権者に伝えるしかない」と知事をけん制した。公明党議員団の越田浩矢幹事長は「(元局長に対する)『うそ八百』発言は怒りにまかせたもの。人間・斎藤に対する不信感につながった」と批判した。
疑惑追及の激化で、片山安孝副知事(7月に辞職)をはじめ、側近が次々と去った斎藤氏。「斎藤知事はただちに辞めろ」。昼休みの県庁前には、市民のシュプレヒコールが響いていた。【幸長由子、村上正、木山友里亜】
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