23日投開票の立憲民主党代表選は、同党が政権交代可能な政党になれるか否かを占うものとなる。有権者の間で既存政党への不信感が漂う中、野党第1党はどこへ向かうのか。
「政党不信というのは、自民党不信の受け皿になりきれない野党不信のことだ」と語るのは元衆院議員の菅野(かんの)志桜里弁護士(50)だ。自民党が不祥事を起こしても一定の支持率を保つ一方で、野党は変革を求める有権者の声に応えられているのか。
民主党政権時代から野党の浮沈を経験してきた菅野氏は「左翼政党ではなく、本当のリベラル政党になれるか。国家の安全保障に向き合えるかが一番の違いだ」と指摘する。
自民と立憲の双方に弱点
菅野氏は、民主党が政権交代を果たした2009年の衆院選で初当選。検事出身で、待機児童問題や「共謀罪」を巡る国会審議などで論客として頭角を現した。民進党政調会長などを経て17年に旧立憲民主党入り。しかし、20年に離党して旧国民民主党に移り、21年衆院選に出馬せず政界を引退した。
菅野氏から見て、自民党の弱点は「強い安全保障と弱い人権保障」、逆に立憲民主党の弱点は「弱い安全保障と強い人権保障」だと映る。多くの人は「国も強くしてほしいし、人への支援も強くしてほしい」と願うが、その願いを受け止める「器」がない。
7月の東京都知事選で政党の支援を受けない石丸伸二氏が躍進した背景も同じだと菅野氏は分析する。
「現状追認だけでは困るし、夢追い人でも困る。うまくバランスをとってくれる、新しい人と器を求めている有権者の前に石丸さんという全然知らなかった候補者が現れた」
憲法改正の議論すらさせない空気
かつての民主党政権は「コンクリートから人へ」を掲げ、ダムや道路などの公共事業を縮小して子育てや教育予算の充実を図った。一方で、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の県外移設を掲げながら実現できず撤回し、批判を浴びた。
民主党が離合集散して生まれた旧立憲も、同じ弱点を引きずっていた。
19年秋の臨時国会。菅野氏が憲法審査会で自らの持論に基づき「(憲法改正について)議論すべきだ」と発言すると、旧立憲内部で問題視された。
当時、安倍晋三首相が憲法への自衛隊明記に強い意欲を示し、旧立憲内には憲法について議論すること自体を抑圧する空気があった。菅野氏は共産党との選挙協力や候補者一本化のために「党として(議論に)踏み込まない」という発言を役員の口から聞いたことが、離党の決め手の一つとなったという。
万年野党か、政権取りか
菅野氏は現在の立憲についても「選挙のたびに安全保障政策を玉虫色にしてきた。安全保障が頼りない政党には政権を託せないという良識的な判断が政権交代のチャンスを奪ってきた」と指摘し、代表選の行方に注目する。
「万年野党で行くのか、それとも本気で政権を取りにいくのか。この選択の問題だ」【安部志帆子】
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