北海道の礼文島付近の領空を侵犯したロシア機=防衛省提供

 防衛省は23日、ロシア軍の哨戒機1機が同日午後1~3時台の計3回にわたって北海道・礼文島沖で領空侵犯を繰り返したことを明らかにした。警戒に当たった航空自衛隊の戦闘機が火炎弾(フレア)による警告を実施した。フレアの使用は1958年に対領空侵犯措置を開始して以来初めてとなる。日本政府は外交ルートを通じてロシア側に「極めて遺憾」と厳重に抗議するとともに、再発防止を強く求めた。

 防衛省統合幕僚監部によると、哨戒機は日本海側から北東に向かって午後0時50分ごろに礼文島沖に飛んでくると、南北方向にジグザグに飛ぶ中で午後1時3分ごろから約1分間領空を侵犯した。その後もジグザグ飛行を繰り返しやがて東西方向に旋回するなかで午後3時31分ごろから約30秒間、午後3時42分ごろから約1分間領空を侵犯したという。午後5時50分ごろに現場空域を離れて、日本海を西に飛行した。

ロシア機による領空侵犯のルート

 空自はF15戦闘機とF35A戦闘機を緊急発進(スクランブル)させて警戒に当たった。領空に近づかないよう無線で注意を呼びかけた後、戦闘機の翼を振って、退去のサインを送った。3回目の領空侵犯が行われた後、警告としてフレアを発射した。空自の戦闘機に対して危険な行為はなかったという。

 旧ソ連時代を含めてロシア機(推定を含む)による領空侵犯を確認し、公表するのは昨年10月以来で44回目となる。このうち、えい光弾と実弾を発射する「信号射撃」を実施したのは87年に旧ソ連の電子偵察機が沖縄本島などの領空を侵犯した時のみ。

 林芳正官房長官は首相官邸で記者団に対し「領空侵犯は極めて遺憾だ」とした上で、「政府として我が国周辺空域でのロシアの軍事動向に強い関心を持って注視し、警戒監視に万全を期していく」と述べた。【松浦吉剛、鈴木悟】

軍事評論家の前田哲男さんの話

 フレア発射の詳細な経緯は不明だが従来はしていない措置であり、ステップが一段上がった対応だ。(フレアは)相手航空機や相手が発射したミサイルをかく乱する狙いがある。空自側はロシア機が攻撃機ではなく哨戒機であると認識した上で使用したはずで、ミサイルや機銃の発射のような攻撃の意図を示すものではなく、日露間の緊張が急激に高まるとは考えにくい。

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