盛土規制法に基づいた福島県の行政代執行は今回が初めてのケースだったが、福島県内では過去にも産業廃棄物などの行政代執行が行われてきた。

<これまでの行政代執行>
1989年、いわき市の四倉町と沼部町であった一連の不法投棄事件。
複数の産業廃棄物処理業者が廃油の入った数万のドラム缶を土に埋めて不法投棄したり、適切な処理をせず放置したりしていた。
周辺の川などに及ぶ水質汚染の危険性を考慮し、福島県は1992年と1998年の2回に渡り行政代執行に着手した。

<課題は費用の回収>
行政代執行で課題とされているのが、費用の回収だ。
いわき市での不法投棄の場合、約22億円の費用をかけ行政執行を終了したが、回収出来ている金額は126万円程度。回収率は1パーセント以下だ。
福島県がこれまでに行っている行政代執行は、西郷村の盛土を含め7件あるが、完全に回収が終わった事案は1件しかない。
今回の行政代執行の経費は2億5千万あまり。その費用は回収されるのか?

関東学院大学の津軽石昭彦教授は「行政代執行っていう仕組み自体は、債権回収を目的にするというよりは、切迫した危険を除去するためにやむを得ず行政が手を下すっていうスキームな訳ですから、まったく回収できないってなると、県民に対しても税金を無駄に使っているんじゃないかと批判を招きかねない部分もある」と話す。

<回収が難しくなるケースが多い>
産業廃棄物の問題に詳しい関東学院大学の津軽石教授。行政代執行は、工事などが完了した後に費用を請求することから、その間に事業者が財産を隠した場合などは回収が難しくなるケースも多いと指摘する。
こうした状況から、場合によっては、行政側が民事訴訟で財産の差し抑えを求めるなどした上で、継続して費用の請求を続けることが重要と話す。「行政代執行の経費は毅然とした態度で臨むべきなんだと思います」

<地域全体で抑止する仕組みづくり>
行政代執行には莫大な費用がかかる。まずは、行政代執行をせざるを得ない状況を生まないこと。そのためにも、津軽石教授は違法な盛り土や不法投棄などを見つけたらすぐに行政に相談するなど地域全体で抑止する仕組み作りが大切としている。

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