パワーハラスメントなどの疑惑を文書で告発された斎藤元彦・兵庫県知事(46)が30日付の失職を表明したことで、出直し選は11月中に実施される見通しとなっている。早期の衆院解散・総選挙も取り沙汰されている中で、県内の一部の自治体は「四重選」の可能性が浮上するなど、各地の選挙管理委員会は「Xデー」に向けた準備にやきもきしている。
斎藤氏は26日の記者会見で、県議会の不信任決議を受けて失職し、出直し知事選に出馬することを表明した。
県選管によると、30日付で知事が自動失職した場合、公職選挙法の規定で選管に失職の通知が来てから50日以内に知事選が実施されることになる。
準備期間を考慮すると▽10月24日告示、11月10日投開票▽10月31日告示、11月17日投開票――の日程が有力とされる。選管は9月30日に協議して知事選の日程を固める方針だ。直近の選挙の実績から出直し選は18億円程度の費用が見込まれるという。
これに加えて、国会では解散風が強まっている。27日に石破茂氏が自民党の新総裁に選出された。石破氏は就任後の記者会見で解散時期について「なるべく早く(国民の)審判を賜らなければならない。適切な時期を判断していきたい」と語った。早期の解散に踏み切れば、知事選と同日選になる可能性も残されている。
選挙期間が重なれば事務作業が煩雑になりトラブルも起きかねない。衆院選と知事選のダブル選を見据えた県選管は「総選挙の時期が決まってから準備していては間に合わない。今から進めていきたい」としている。
本音では避けたい「四重選」
さらに同県丹波市では、任期満了に伴う市長・市議選が11月17日投開票で予定され、四重選の可能性が浮上している。斎藤氏への不信任決議が可決された翌日の20日、市役所の会議室には市の選管委員ら7人が集まった。
会議ではA4判の資料4枚が配られた。うち1枚は「各選挙想定日程に伴う市長市議選の変更」というタイトルで、衆院選や知事選で予想される九つの日程パターンが表にまとめられていた。
公選法は、地方自治体の首長選や議員選を、任期満了前の30日以内に執行する必要があると規定する。丹波市長・市議の任期満了は12月4日。会合では市長・市議選の投開票日を変更できないか議論が交わされた。
市側は「市民にとって一番関心がある市長・市議選を遅らせたくない」との思惑もあり、衆院選や知事選との四重選は避けたいのが本音だ。一方で現実となった場合に備え、投票箱約80個の新調費約550万円を盛り込んだ補正予算案を開会中の市議会に提案している。
ただ、いずれも日程が決まっていないため、この日の協議は平行線に終わった。委員からは「仮定の話をしてもどうしようもない」などの声が上がった。
市選管の担当者は「さまざまなパターンを想定して準備を進めなければならず、負担が大きい」と困惑している。【大野航太郎、幸長由子】
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