29日投開票された福岡県大川市長選で初当選した新人、江藤義行氏(77)=無所属=は同日夜、報道陣の取材に応じ、市が2028年3月開業を目指している観光拠点施設「大川の駅」計画について「民意が明らかになった。白紙に戻す。大野島で進めることはない」と抜本的な見直しをする考えを示した。既に始まった地盤改良工事については「工事は止められないかもしれないが、跡地の有効利用を考える」と話した。
「大川の駅」は総事業費約88億円を見込み、敷地4・3ヘクタールに有明海沿岸自治体の海、山、川の幸を売り出す「道の駅」「川の駅」を併設し、市の基幹産業である家具も売り出して福岡、北九州両都市圏に匹敵する経済圏域作りを目指す計画だ。予定地では6月から地盤改良工事が始まっている。これに対し、江藤氏らを中心メンバーとする市民団体「市の将来を考える会」が6月以降、計画に反対する署名約6500筆を市に提出していた。
選挙戦で江藤氏は「(計画は)身の丈に合わない」とSNSなども使って批判し、筑後川の中州にある大野島には水害の危険があるとも訴えた。「大川の駅の是非を問う住民投票」(陣営幹部)と争点を絞る戦略が奏功し、市財政を不安視する市民に支持を広げた。
一方、敗れた2期目の現職、倉重良一氏(47)=無所属=の陣営は、選挙戦で「『大川の駅』計画が本当に争点だろうか」と子育て支援、防災、市庁舎内のデジタル化など2期8年の実績を主張した。組織面では、前市長の鳩山二郎衆院議員(自民)や地元選出の秋田章二県議(同)が全面支援して約85団体の推薦を受け、告示前には自民党の森山裕総務会長(現幹事長)、選挙中は武田良太元総務相も応援に駆けつけた。
投票を終えた70代の男性は「21年の大川の駅全体計画発表後、市はシンポジウムを開いたが、建設ありきの内容だった。建設の是非や規模、内容を説明したり意見交換をしたりする機会が乏しく、説明不足だった」と振り返った。
また江藤氏は、4月に約1割引き上げた市長報酬を3割削減する方針を明らかにした。同じく約1割引き上げた副市長(2人)、教育長の給与を元に戻す考えで、副市長については「1人で良いだろう」と語った。市立小中学の給食費無料化、18歳までの医療費無料化も進める考えも示した。【降旗英峰】
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