石破茂首相は1日夜の就任会見で「国民から信頼される内閣でありたい」と強調したが、臨時国会で衆参予算委員会を実施しないまま衆院解散に踏み切る方針に転じるなど、就任前の発言との言行不一致が早くも目立ち始めた。女性の社会参画の推進を掲げるのに女性閣僚はわずか2人にとどまり、看板倒れの状況。野党は「口約束の空手形」と批判を強めている。(坂田奈央)

◆「早急に信を問うべきだ」と主張を一変

 最短日程での衆院選の実施について、首相は1日の会見で「新体制というものは早急に信を問うべきだ」と強い口ぶりで訴えた。総裁選中は「国民に判断材料を提供するのは新首相の責任。本当のやりとりは予算委員会だ」と与野党の十分な論戦の必要性を繰り返していたのに、主張を一変させてしまった。

記者会見する石破首相=1日、首相官邸で(市川和宏撮影)

 会見では「ルールを守る政治を」との首相の発言に引っかけて、記者から「首相になったら(総裁選での一連の発言の)見直しはやむを得ないか」と追及された。それでも、国民に判断材料が提供できるかに関して「衆参の本会議の他に機会が与えられれば、国民の心に響くようにやっていきたい」とはぐらかし、最後まで正面から答えようとしなかった。

◆「女性参画は官民の目標」なのに女性閣僚2人どまり

 女性の社会参画については、自民党総裁選の政策集で、ジェンダーギャップ(男女格差)の改善を掲げ、会見でも「社会のあらゆる組織、あらゆる場面の意思決定において、女性が参画することを官民共通の目標とする」と胸を張った。にもかかわらず、石破政権の意思決定に関わる女性閣僚は、第2次岸田再改造内閣の5人から3人減の20人中2人だけだった。  選択的夫婦別姓の導入に関しても、総裁選中は「やらない理由がわからない」と賛成の立場をアピールしていた。就任会見では言及がなく、自民、公明両党が9月30日に交わした「連立政権合意」への記載も見送られ、実現への首相の思い入れは感じられない。  首相は2日、バイデン米大統領との初めての電話会談に臨んだが、肝いりの日米地位協定の改定には触れなかった。1日の会見でも「首相になったからといって、いきなり実現するとは思っていない」「(関係閣僚に対し)今、具体的に指示を出しているわけではない」と慎重な言い回しにとどまった。  立憲民主党の小川淳也幹事長は2日の会見で「首相の言葉はただちに国民生活の命運を左右する。言葉に信任を感じられない首相は何事も進めることができない」と非難した。 

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