米国を訪問中の岸田文雄首相は11日(日本時間12日)、米首都ワシントンのホワイトハウスでバイデン米大統領、フィリピンのマルコス大統領と会談した。3首脳は共同ビジョン声明を公表し、安全保障と経済の両面で関係強化を目指す。
日米比首脳会談は史上初開催となる。2022年に発足したフィリピンのマルコス政権は、海洋進出を進める中国と南シナ海での領有権問題を巡って対決姿勢を強めている。フィリピンは日米から安全保障面に加え、経済面でも協力を受け、経済・開発分野での中国依存度を引き下げたい狙いがある。
安全保障分野では、バイデン氏は日本、フィリピンへの「揺るぎない同盟上の関与」を再確認し、南シナ海での「中国の危険かつ攻撃的な行動」に深刻な懸念を表明。中国が公海上でフィリピン船舶へ妨害行為をすることや、フィリピンが実効支配するアユンギン礁(英語名セカンドトーマス礁)への補給活動を妨害していることに懸念を示し、同礁へのフィリピンの権益を認めた16年のオランダ・ハーグ仲裁裁判所の判決を順守するよう求めていく。
3カ国は海洋協力などを進めるため、日米比海洋協議を新設することで一致。日本は同志国軍に防衛装備品などを供与する枠組み「政府安全保障能力強化支援(OSA)」でフィリピンを引き続き支援する。自由で開かれたインド太平洋の必要性を共有し、日米豪印の協力枠組み「クアッド」や米英豪の安全保障枠組み「AUKUS(オーカス)」、日米韓などの取り組みを歓迎する。
中国を念頭に経済力を使って相手国や企業に圧力をかける「経済的威圧」に強く反対する。
経済・開発分野では、主要7カ国(G7)などが主導して途上国のインフラ整備を支援する枠組み「グローバル・インフラ投資パートナーシップ(PGII)」に基づき、フィリピンの首都マニラや要衝を結ぶ「ルソン経済回廊」構想を支援する。
構想ではルソン島にあるスービック湾、クラーク、マニラ、バタンガスを結ぶ地域で、港湾、鉄道、クリーンエネルギー、半導体の供給網(サプライチェーン)関連のインフラを整備する。米国際開発金融公社が投資促進に向けて、フィリピンに地域事務所を開設する。民生用原子力の能力構築への協力も進める。【ワシントン小田中大、秋山信一】
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