名古屋市の河村たかし市長(75)=4期目=が衆院選への出馬を表明したことを受け、河村氏と市議会の間で緊張が高まっている。河村氏は近く市議会議長に辞職願を提出する考えだが、市議会は定例会のまっただ中。議会内では「議案審議中に(職を)投げ出すのか」と批判の声が渦巻き、辞職願の「不同意」も選択肢に上がる。「総理を狙う男アゲイン」と国政再挑戦をぶち上げた河村氏と市議会の最後の対決の行方は――。【真貝恒平】
地方自治法では、市長が辞職を申し出た日を含め20日以内に辞職したい場合は、辞職時期について議会の過半数の同意が必要になる。河村氏は市議会議長に辞職願を提出し、議会に同意をもらって辞職する「青写真」を描いていた。
河村氏は、衆院選出馬を正式に表明した1日の記者会見で「ちゃんと意思として同意をもらった方が、まあ感じはええわね」と議会に理解を求めた。
だが今、“円満”に辞職できる状況にない。「まだ議会は終わっていない中で『辞職します』と言われても……。非常に違和感があり、議会軽視と思われても仕方がない」。市議会は自民党や旧民主党系の会派が多数派を占め、市長とは対立関係にあるが、議会内与党のある市議はこう話す。
関係者によると、河村氏は9日に辞職願を議長に提出し、11日に本会議で諮りたい考えを示しているという。地方自治法では市長が不同意となった場合でも、申し出日を含め21日経過すれば辞職扱いとなる。市議会は16日が閉会予定だが、そもそも衆院選が15日に公示され、河村氏が立候補を届け出れば、その時点で自動失職となる。
不同意となったとしても河村氏が辞職することに変わりはない。しかし、別の与党市議は「市長が不在の時に、大災害などが起こらないとも限らない。不同意にして河村さんには15日まで市長を全うしてほしい」と話す。
市長在任期間の歴代最長を誇る河村氏は市長1期目の2010年12月、市議報酬半減などを掲げた市議会解散請求(リコール)の署名が規定数を超え、住民投票実施が決定。11年2月に出直し市長選で当選し、リコールも成立し、市議会が解散するなど、市議会と度々衝突した歴史がある。自身が代表を務める地域政党「減税日本」の市議会会派は第1党の時代もあったが、今は少数派だ。
不同意をちらつかせる議会側の動きに、河村氏は5日、街頭演説した名古屋市内で報道陣に「わしが議会会期中に死んだら無責任なんですか?」とぶぜんとした表情でまくし立て、「政治を良くしようと思って市長もあるし、衆院議員もある。こういうチャンスをつかんでやっているのは、やらないかん務めだがね」と反論した。
7日には市議会の正副議長、各会派の団長らが河村氏の辞職について協議する予定で、河村氏にも出席を要請している。
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河村氏は衆院愛知1区に、自身が共同代表を務める日本保守党の公認で出馬を予定。愛知1区には他に自民党現職の熊田裕通氏(60)、立憲民主党の吉田統彦氏(49)=比例東海、日本維新の会の山本耕一氏(47)が立候補の準備を進めている。
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