激戦を制し、市長に返り咲いた内田康宏氏(左)=愛知県岡崎市で2024年10月7日午前0時6分、塚本紘平撮影

 6日投開票された愛知県岡崎市長選は、前市長の内田康宏氏(71)=自民、公明推薦=が、現職の中根康浩氏(62)▽新人で元市職員の昼田浩一郎氏(36)▽新人で音楽スクール社長の冨田靖成氏(51)を破り、返り咲きを果たした。選挙戦では、前回選で掲げた公約を実現できなかった中根氏を厳しく批判。衆院選を控え政党の動きが活発化し、組織票を固められたことも雪辱につながった。【永海俊、塚本紘平】

 7日未明、当選が確実となった内田氏は、岡崎市内の選挙事務所で「この地域はものづくりで栄えてきた。それはしっかり守った上で、観光産業をもう一つの経済の柱にしたい」などと抱負を語った。市民から要望のある高校生世代までの通院費無償化や学校給食費の段階的な無料化を「来年度の新年度予算でできるよう準備していきたい」と述べた。

 前回選では、新型コロナウイルス対策として「全市民への5万円給付」を掲げた中根氏に敗れた。だが、財源を巡って議会側に反対の声が強まり、給付は実現しなかった。

 内田氏陣営は今回、「市民への約束を果たせない人間が市長をやってはいけない」などと非難。市民の目を改めて「5万円問題」に向けさせる戦略を取った。内田氏は「市民からは(中根氏が)うそをついたという言葉をよく聞く。(選挙への影響は)あったと思う」と振り返った。

敗戦を認め、支持者らに謝罪して回る中根康浩市長=愛知県岡崎市大樹寺の選挙事務所で2024年10月7日午前0時過ぎ、永海俊撮影

 一方、敗戦を受けて支持者らに頭を下げた中根氏は、議会の反対を受け実現できなかった経緯を踏まえ、「必ず実現できるものしか公約できないとなると、二元代表制での議会との関係はどうなるのか」と反論した。

 告示翌日に石破茂・自民党総裁が衆院選の日程を表明し、内田氏の演説会には自民、公明両党の国会議員らが次々と姿を見せた。3日には自民党総裁選に出馬した小林鷹之衆院議員が駆け付け、内田氏だけでなく、愛知12区で立候補を予定する青山周平衆院議員にも「国政に絶対欠かせない仲間」とエールを送った。

 中根氏は自身の敗因に触れ、「最終的には自民、公明の組織力だと思う。衆院選が重なり、前哨戦の位置付けになった」と述べた。

 今回の投票率は53・47%(前回57・25%)と2000年選挙以降で最も低く、組織力で勝る陣営に有利に働いた可能性もある。

 内田氏が就任後に進めるという高校生の通院費無償化は、今年9月の市議会で中根氏が既に提案している。だが、これも「5万円問題」と同様、財源を理由に否決された。議会とのぎくしゃくした関係が目につく市政に対する市民のうんざり感が、投票率低下に表れたとの見方もできる。

 市議選も市長選と同日投開票され、37人の新議員が決まった。

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。