詐欺罪で在宅起訴された広瀬めぐみ氏=自民党を離党=の議員辞職に伴う参院岩手選挙区補選(改選数1)が10日に告示される。投開票は27日で、衆院選との同日選となる公算が大きい。自民は広瀬氏辞職による厳しい世論を見越して候補者の擁立自体を見送る「不戦敗」。2022年7月の参院選で広瀬氏に敗れた立憲民主党元職を軸に、5人による選挙戦が予想される。
広瀬氏の不祥事にとどまらず、岩手県政界には自民の裏金問題などの余波もくすぶり、2年前にあった参院選や3年前の衆院選からは構図が大きく異なっている。
「県民のみなさんにもう一度『やり直し』をしていただき、岩手の政治を立て直す」
再起を図る立憲元職、木戸口英司氏(61)が言う「やり直し」とは、広瀬氏が初当選した2年前の参院選のことに他ならない。
この年、参院岩手選挙区として30年ぶりに自民に議席をもたらした広瀬氏。その後、秘書給与を詐取した容疑で東京地検特捜部の家宅捜索を受け、離党。今年8月に議員辞職した。
こうした経緯を踏まえ、自民県連は今回の参院補選では、候補予定者の選出を見送った。立憲は2年前に議席を失った木戸口氏を再び擁立する構図だ。
岩手県は広瀬氏の事件によって大きく揺れ動いただけでなく、2年前の参院選とは政治状況は大きく様変わりしている。世界平和統一家庭連合(旧統一教会)との関係や、政治資金パーティーの裏金問題を巡って与党への風当たりが強まっているからだ。
次期衆院選で5選を目指して岩手3区で立候補を予定する自民の藤原崇氏(41)もその一人だ。2年前の参院選の前年に行われた前回衆院選では、長年にわたって強固な地盤を築いてきた立憲の重鎮、小沢一郎衆院議員(82)を初めて小選挙区で破った。地元では今も鮮烈な印象が残る。
しかし藤原氏は今年、党青年局幹部らが参加した懇親会に露出の多い衣装の女性ダンサーを複数招いたことなどが判明して青年局長を辞任。さらに裏金のキックバックを受けたとして党幹事長から注意を受け、次の衆院選でも比例重複での立候補が認められない見通しだ。
藤原氏との一騎打ちが予想される小沢氏は衆院選に19回目の当選を目指す。9月の党代表選では野田佳彦氏を応援し、新代表として選出されるのを支えるなど、中央政界で存在感を発揮。「政権交代」を旗印に訴え、参院補選との連動も図りたい考えだ。
参院岩手補選にはこのほか、参政党新人の吉田利也氏(48)▽政治団体「幸福実現党」新人の松島弘典氏(67)▽無所属新人で元滝沢市議の田中亜弓氏(53)▽政治団体「世問う国民党」新人で高知県出身の会社役員、小田々豊氏(69)――が立候補を予定している。
また、次期衆院選の岩手1区には7期目を目指す立憲現職の階猛氏(58)に、自民新人の元県議、米内紘正氏(37)、共産新人の党県副委員長、吉田恭子氏(43)が挑む構図が見込まれる。
岩手2区は11回目の当選を目指す自民現職の鈴木俊一前財務相(71)と、立憲新人で会社役員の中村起子氏(59)が出馬する意向を示している。【釣田祐喜】
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