「伏して伏しておわびする。二度と、みなさんに情けない思いをさせないと誓う。本当に申し訳ありません!」
解散前日の8日午後、自民党旧安倍派に所属していた前職、小田原潔元副外相(60)は地元・東京都日野市の駅前のロータリーに立ち、約100人の聴衆に頭を下げていた。
小田原氏は政治資金収支報告書への不記載額が1240万円あり、党の役職停止6カ月の処分を受けた。この日の街頭演説では政策を訴える前に、まず不記載に関する謝罪から入った。支持者らにも、訂正部分を記した政治資金収支報告書の写しとおわび文を配って説明している。
東京21区で4回の当選を重ねるものの、うち2回は比例代表での復活当選。だが、党は今回、不記載があった国会議員らについて比例との重複立候補を認めない。小田原氏は演説で「日本刀でチャンバラをするようなもの。絶対に負けてはならない」と強調した。
そこに追い打ちをかけるように、党は9日、小田原氏ら6人を追加で非公認にすると発表した。公認を得られないと政見放送に出られなくなるほか、ビラの枚数や選挙カーの台数も制限される。たとえばビラは候補者なら誰でも7万枚まで配布でき、政党の公認候補ならさらに4万枚上乗せして配れるが、この上乗せ分がなくなる。事務所で取材に応じた小田原氏は「びっくりしたが、党の決定は真摯(しんし)に受け止める。事務的なところでは大きな影響があるが、当選したら自民(の会派)へ行く」と語った。
旧安倍派で「5人衆」と呼ばれた一人で、党役職停止1年の処分期間中である自民前職の松野博一前官房長官(62)。3月に衆院の政治倫理審査会に出席しており、非公認は免れたものの、地元の千葉3区では逆風が吹いている。
9月以降、各地で後援会の会合を開き、不記載額が1051万円に上った裏金問題を支援者らに説明した。千葉県市原市内での会合の出席者によると、冒頭約30分間を説明に充てたが「慣習で続いていた」「(通常の)政策活動費の範囲内で使った」などと、政倫審や報道を超える内容はなかったという。この出席者は「説明されたが、(本当かどうか)分からない。政治資金収支報告書にきちんと記載すればよかったのだ」と突き放す。
官房長官だった前回2021年衆院選は、一騎打ちとなった立憲民主党元職の比例復活も許さない圧勝だった。だが今回、街の反応は厳しい。陣営は危機感を抱き、早い時期から企業や支援者らをこまめに回る。松野氏は9日、国会での取材に「説明をしっかりやっていく」と述べ、足早にその場を去った。陣営幹部は「前回は官房長官就任後の『ご祝儀』で票が自然と集まった。今回は正に背水の陣」と語る。
「政治と金の問題で国民に不信を抱かせたことに対してはしっかり反省し、立て直していかないといけない。緊張感を持って選挙に臨む」。支援者回りなどのために地元の福岡県田川市に戻った自民前職の武田良太元総務相(福岡11区)は5日、記者団にそう語った。
裏金事件で政治資金収支報告書への不記載額が1926万円あり、党の役職停止1年の処分を受けている武田氏。関係者によると問題発覚後、武田氏は謝罪行脚も兼ねて地元に戻る頻度が増え、6月にあった後援会の会合では「次の選挙は『みそぎ』となる」と深刻な表情で訴えたという。
一方、武田氏は記者団に「本当に裏金をもらった人には厳しい判断が下ると思うが、我々はもらっていない。そこは堂々と政倫審でも説明した」とも述べた。
地元自治体の首長らが選対本部長に名を連ね、強固な後援会組織と知名度をバックに選挙戦では圧勝を重ねてきたが、「自民への風当たりはきつい」と陣営には緊張感も走る。武田氏を支援する自治体の元首長は「これまでの選挙に比べて票を減らすだろう。選挙民を甘く見てはいけない」とくぎを刺した。【野倉恵、朝比奈由佳、浅見茂晴、西本紗保美、松本昌樹】
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