衆院選が15日公示され、27日の投開票まで12日間の舌戦が始まった。自民党派閥の裏金事件の対応に注目が集まる一方、埋もれがちになっている物価高対策や地方の再生、安全保障など、生活の安定や国の行く末を左右する諸課題にどう向き合うのか。各地で発せられた候補者の声に、有権者は耳を傾けた。
政府が進める米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の県内移設計画への賛否がこれまで最大の争点となってきた沖縄県の4選挙区。県との法廷闘争の末、政府が1月に軟弱地盤改良に向けた工事に着手したことを受け、各候補者は基地負担の軽減策や安全保障政策、米軍の特権を定めた日米地位協定のあり方にも論点を広げ、訴えを展開した。
普天間飛行場や嘉手納基地など広大な米軍基地を抱える沖縄2区。「爆音、騒音、環境問題が大変な状況。県民の命がかかっているのに、今の政権は一切顧みない」。社民党唯一の衆院議席死守を目指す副党首で前職の新垣邦男氏(68)は宜野湾市での第一声で自公政権を批判した。見守った70代の女性は「結局米国の言いなりで、普天間飛行場もいつ返還できるのかわからない。政治に緊張感を持たせるために野党に頑張ってほしい」と期待する。
小選挙区での初勝利を目指す自民党前職で副厚生労働相の宮崎政久氏(59)は浦添市でマイクを握った。辺野古移設には触れず、「空想的平和論ではなく、現実的な安全保障政策で県民の命や暮らしを守る」と訴え、政府が進める南西諸島の防衛力強化に理解を求めた。駆けつけた浦添市の会社員、名護拓也さん(37)は普天間飛行場返還後の跡地利用などを念頭に「大規模な街づくりのため、予算を獲得できる自民党に期待したい」と語った。
日本維新の会新人で元県議会議長の赤嶺昇氏(57)は2004年に米軍ヘリコプターが墜落した宜野湾市の沖縄国際大前で演説。当時、日本の警察による捜査が事実上できなかった経緯に触れ、「日米地位協定の改定に全力を懸けていきたい」と力を込めた。
参政党新人で写真館職員の今野麻美氏(47)と無所属新人で会社社長の比嘉隆氏(47)も立候補した。【比嘉洋、喜屋武真之介】
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