防衛省は、陸上自衛隊と海上自衛隊でそれぞれ安全保障上の「特定秘密」を漏えいする事案が起きたとして、計5人の懲戒処分を26日発表した。自衛隊での特定秘密漏えいによる処分発表は2度目となる。
防衛省によると、陸上自衛隊で停職6日の処分を受けたのは北海道旭川市の第2師団司令部に所属する50代の2等陸佐。
2023年7月、当時、北部方面隊隷下の部隊指揮官として、上富良野演習場で行われた訓練で指示や伝達を行う際に、参加する隊員の意識を高揚させようと思うあまり深く思慮せず、約20人を前に特定秘密の内容を発言し、知るべき立場にない15人に漏えい。防衛省への情報提供で発覚した。
2等陸佐は自らの発言後に特定秘密に該当する可能性があると認識していたが、部下隊員から、漏えいが広がるのを防ぐための措置を取ったとの報告を受けて、上級部隊への報告については必要ないと誤って判断し怠っていたという。防衛省は懲戒処分と共に警務隊に告発状を提出する方針。
また、海上自衛隊で停職6日や減給2カ月の処分を受けたのは海上幕僚監部に所属する40代の1等海佐ら4人。
1等海佐は2022年6月、当時、護衛艦「いなづま」の艦長として、特定秘密の適性評価を経ておらず取り扱う資格のない隊員を「特定秘密取扱職員」に指名。
「いなづま」が2023年1月、山口県周防大島沖を航行中に浅瀬に乗り上げ、航行不能になる事故を起こすまでの間に行われた約2カ月の任務行動の際に、戦闘指揮所で特定秘密を取り扱わせ、船舶の航跡情報が漏えい。この隊員は資格を有していると思い込んでいたという。
1等海佐らが年に2回の定期検査の際に必要な確認などを怠り、事案の認知が遅れたことも判明。
防衛省はこの2件について「第三者への更なる漏えいは確認されなかった」としている。
特定秘密をめぐっては、これまでに海自の1等海佐がかつて上司だったOBに漏らしたとして、2022年12月に懲戒免職処分を受けている。
防衛省は「再発防止措置を講じてきているにもかかわらず、新たな事案が発生したことは誠に遺憾だ」とした上で、副大臣をトップとする再発防止検討委員会で情報保全体制の見直しについて検討を行っていくとしている。
木原防衛相は記者会見で「海自OBに対する特定秘密漏えい事案に続き、このような事案が発生したことについて極めて深刻に受け止めている」と述べた上で、「我が国防衛を全うするために必要となる秘密情報を保有する防衛省においてこうした事案はあってはならないことだ。今般の事案を深刻に受け止め、国民の皆様からの信頼回復に全力を尽くすよう、防衛省全体として再発防止に全力を尽くしていく」と強調した。
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