自民党派閥の裏金事件を受け、政治資金規正法改正などを議論する衆院政治改革特別委員会が26日に始まり、各党の改正案が出そろった。自民と他党の隔たりは大きく、6月の会期末までに実効性のある案をまとめられるかが焦点となる。
この日は、各党各会派の代表者7人が約10分間ずつ、意見表明を行った。
自民の大野敬太郎・与党筆頭理事は冒頭、裏金事件について「極めて遺憾だ」と陳謝し、政治家の責任強化▽外部監査の強化▽デジタル化の3点からなる再発防止策の実現を最優先すべきだと主張した。政治家の責任強化策として、「いわゆる連座制」を導入し、「会計責任者に任せていた」という国会議員の言い逃れを防ぐとした。
具体的には、政治資金収支報告書が適正に作成されたことを示す「確認書」の提出を政治家に義務づけ、会計責任者が報告書の不記載などで刑事処分を受けた場合、条件つきで議員の公民権を停止するという。
公明党や立憲民主党など他党は再発防止策にとどまらず、裏金事件の実態解明に加えて、「政治とカネ」にまつわる諸課題を解決することを求めている。大野氏は「今回の事案とは直接関係しない項目でも、逃げることなく正面から取り組む」と述べたものの、「政治資金の多様性」や「プライバシーの確保」を理由に、野党が求める企業・団体献金の廃止や政策活動費の使途公開などには慎重な姿勢を示した。実態解明の必要性については、言及すらなかった。
野党側は攻勢を強める構えだ。立憲の笠浩史・野党筆頭理事は「もはや自民だけの問題ではなく、日本政治の危機だ」と指摘。裏金を作っていた自民議員が説明責任を果たし、政治責任を取るよう求めた。報告書の不記載で会計責任者に故意や重過失がある場合には、自民案と異なり、無条件で議員を処分の対象にすべきだと主張した。
日本維新の会の浦野靖人理事は、実態解明に指導力を発揮しない岸田文雄首相を批判し、再発防止策にとどまる自民案に疑問を呈した。共産党の塩川鉄也氏は、裏金事件の実態解明のため、安倍派会長だった森喜朗元首相の証人喚問を求めたほか、「企業・団体献金の全面禁止し、抜け穴は完全にふさがないといけない」と訴えた。
自民と連立政権を組む公明も、自民案との隔たりが改めて浮き彫りになった。公明の中川康洋理事は「一刻も早く民衆から遊離した政治をただし、信頼回復に全力で取り組む」とし、自民が後ろ向きな政治資金パーティーの公開基準の引き下げや政策活動費の使途公開を求めた。
昨年12月の裏金事件の発覚を受け、与野党は今年3月、国会による実態解明と再発防止策を議論するため、特別委の設置で合意した。ただ他党に比べ、自民が党独自の改正案のとりまとめが遅かった結果、この日は意見表明にとどまった。
自民は今後、公明との協議を進め、5月の大型連休明けに与党案をまとめる方針。特別委での与野党の本格的な論戦はそれ以後となる見通しだ。(小木雄太)
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