与党が過半数を割り込んだ衆議院選挙。気になる3つのポイントの「思ったより負けた?」「政権交代は起きる?」「今後政局はどうなる?」をジャーナリストの後藤謙次さんに聞きました。
■専門家どう見た?“過半数割れ”の意味
ジャーナリスト 白鴎大学名誉教授 後藤謙次氏
「選挙戦を通じて政治とカネがテーマになって、それに対して石破総理も最初からおわびから始まって、それから途中で発言がくるくる変わる、ぶれる。わびるとぶれるがそろった時の選挙で勝った試しがない」
今回の選挙はジャーナリストの後藤さんの目にはどう映ったのでしょうか。
ジャーナリスト 後藤謙次氏
「大惨敗でしょう。つまり、自公で過半数もいかなかったし、野党第1党の立憲にこれほど肉薄されて。だから総理指名選挙すら展望が開けてないというのは、もう大惨敗以外の何ものでもない。立憲民主党が野田政権を作るということで、他の野党の賛同が得られれば一気に野田政権が誕生できる状況が作られた」
自民と公明の与党は公示前の279議席から大きく議席を減らし、215議席に。過半数の233議席に届かず、15年ぶりに過半数を割り込みました。
一方、立憲民主党は50議席増えて148議席に。国民民主が21議席増の28議席と大きく躍進したのでした。
石破総理大臣が自民党総裁として大敗した選挙を振り返りました。
石破茂総理大臣
「私自身も原点に帰り、厳しい党内改革を進め、なかんずく政治と金につきましては、さらに抜本的な改革を行って参ります」
28日、自民党と公明党は急きょ、幹事長など党の3役が会談を持ちました。
今回、裏金議員として自民党非公認で選挙に臨んだのは10人。そのうち7人が落選しました。
公認をもらった裏金議員も丸川珠代氏など比例代表の重複立候補が認められず、比例復活はありませんでした。
大臣経験者も相次いで落選する事態。この大敗の原因は、どこにあったのでしょうか。
ジャーナリスト 後藤謙次氏
「やっぱり急いで解散をやったことでしょう。つまり早く解散をやれば野党の準備が整わないんだと。一気呵成(かせい)にやっちゃおうと。火がボウボウ燃えてる中で水かぶって走れば大丈夫だというような気分で(解散を)やったんじゃないか。つまり甘い楽観的な見通しのもとに突き進んだ結果が今回の敗北につながった。つまり甘い見通しというのは、まともな準備をせずに日付だけ決めて一気に向かっていった。そこに政治とカネの問題に対する対応の甘さが積もり積もってきて、最後とどめのように“2000万円問題”が登場した」
自民党非公認 無所属 小田原潔氏
「2000万円いらない、返します。かえって送られて迷惑。困惑してます」
投開票直前、自民党が非公認の候補者の政党支部にも2000万円を支給したとされる問題も大きかったといいます。
今回の結果を受けて選挙の責任者である小泉選対委員長が28日、選対委員長を辞任しました。
選対委員長を辞任した小泉進次郎議員
「目標を掲げて戦って、その結果が出なかった執行部で選挙の責任を負うべき。責任を取るというのは当たり前のことだと思う。今後しっかりと涙をのんだ候補者議員に対するケアや向き合い方、支え方は一議員として、その時の判断をした責任としてこれからも寄り添っていきたい」
ジャーナリスト 後藤謙次氏
「小泉氏には申し訳ないけど、選対委員長ポストの辞任ではあまりにも軽すぎる。やはり幹事長、総理大臣、そこが辞めるに値する敗退。ただ、後がいない。総裁選からまだ1カ月しか経っていない。次がいない状況のなかで続投せざるを得ない。そうすると森山幹事長が責任を取るということになれば、それは石破さんにも当然、波及する」
■政権交代は起きるのか
自民党の当面の問題は来月7日で想定されていた総理大臣の指名選挙です。
ジャーナリスト 後藤謙次氏
「少なくとも国会で、野田佳彦総理という議決が行われないこと。だけど実際は野党側の方が人数多いわけだから。このままいくと自民も立憲も過半数を超えていないので決選投票になることは確実。その決選投票のなかで『野田と書かないでほしい』というのが自民党側からの立憲以外の党に対する要請」
後藤氏は野党の連立政権による政権交代は起きないのではとみているといいます。
ジャーナリスト 後藤謙次氏
「野党側の準備が全くできていないからです。つまりライバル同士のまま選挙戦へ突入して結果が出た。短期間の間に政権をともに担うということにはならない。動きがあるとしたら、きのうの段階で動いているはず、野党側が。一気に党首会談を行ったりとか。今も党首会談が開かれた形跡全くないですよね」
ここに自民党が働き掛ける“隙”ができるというのです。
ジャーナリスト 後藤謙次氏
「その自民党の働き掛けに一党でも応じれば、石破政権は安定政権に移行していくと。ですから必死にその工作をやるのではないか。やっぱり当面は国民民主が最大のターゲットだと思います」
■自公はどこと組むのか?
自公と他の党が連立することもあるのでしょうか。
もし28議席の国民民主党が与党側になった場合、与党側が243議席で過半数を上回ります。
ただ、ある官邸関係者は、国民民主党は「かなり高く売ってくるだろう」と警戒するなど、調整は難航する見込みです。
国民民主党の玉木代表は自公との連立に否定的な発言をしています。
国民民主党 玉木雄一郎代表
「私から連立に入りませんということは、そういうことは考えておりませんということは選挙中も申し上げましたけども。これまでと同じなんですが、政策本位で良い政策があれば協力するし、駄目なものは駄目と言っていく以上です」
一方、立憲民主党も…。
立憲民主党 野田佳彦代表
「(Q.近いうちに他党代表と党首会談の考えは?)きょうからそういう日程セットをまずは11時の役員会で方針を決めてから対応スタートしたいと思います」
「(Q.まずは順番としては国民民主から?)基本的にはそういうことになるだろう」
ジャーナリスト 後藤謙次氏
「(自民党が)連立するなら国民民主党、あるいは日本維新の会。場合によっては政策ごとに立憲民主党とも協議をしながら協力を得る。これを我々の言葉で『パーシャル連合』という。政策ごとに合意を求めて国会で法制化して行く。そっちに向かおうとしている可能性がかなりあるのでは(野党が)連立に入ると結局、連立与党としての責任が生じる。すると、自由度が減りますよね。玉木代表は結構、自由に色んな発言・行動をしていたが、与党に入ると与党の取り決めのなかで動きが非常に窮屈になってしまって来夏の参院選を考えれば、自由な立場で縦横無尽に選挙戦をやりたい」
28日、石破総理が会見で野党に協力を呼び掛けました。
石破総理大臣
「議席を大きく伸ばされた党がある。私どもとして、これから先、それぞれの党の主張に対して寄せられた国民の理解・共感を謙虚に受け止め、取り入れるべきは取り入れることにちゅうちょがあってはならない。そのうえでこれから先、どのような政権の枠組みを考えるか。今この時点で連立を想定しているわけではない」
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