日本維新の会は27日投開票の衆院選で、本拠地・大阪で全勝し、初めて府内全19小選挙区を独占した。ただ、全国的には伸び悩み、議席数は公示前の43から38に減少。目標に掲げた「野党第1党」には遠く及ばなかった。吉村洋文共同代表は一夜明けた28日、「大阪以外は野党の中で独り負けしている」と厳しい結果だったと認めた。
「積極的に支持されたと見るべきではない。(裏金事件で批判された)自民党よりは、まともな政治をやっていると判断されたのだと思う」。報道陣を前に、そう語る吉村氏の表情はさえなかった。
党幹部は選挙戦で全国を回ったが、滋賀より東の選挙区は全滅。野党第1党としての地位を固めた立憲民主党や議席を4倍にした国民民主党と比べると、見劣りする結果となった。
党勢をはかる上で、比例代表の得票は一つのバロメーターになる。
維新は2021年の前回選では全国で約805万票を獲得したのに対し、今回は約511万票と、約300万票も激減した。
実は大阪府内でも比例得票を大きく減らしている。前回の約172万票から57万票減の約115万票に落ち込んだ。得票率も42・5%から30・7%に低下。吉村氏は「正確な分析はできていない」としつつも、公示直前に擁立を決めた大阪9区を除く府内18選挙区で、比例代表との重複立候補を認めなかった影響を示唆した。「(比例で)維新と書いても、大阪の候補を応援したことにならない」という街の声があったという。
それでも、府内の小選挙区が維新のイメージカラーの「緑一色」になったのは、他党の「敵失」と準備不足が要因といえる。
自民は裏金事件で有権者の厳しい審判を受け、府内では比例復活の1議席しか獲得できず、公明は長年維持した4議席を全て維新に明け渡した。
他の野党も候補者の擁立が進まず、絶対的なコマ不足だった。
立憲は府内の小選挙区に5人、国民民主は1人の擁立にとどまり、自公や維新に対する批判票の受け皿となりえなかった。
小選挙区は無所属新人、比例は立憲に投じたという大阪市の70代男性は「立憲の候補がいれば投票しようと思った。自民は裏金事件だけでなく、国民のためにお金を使おうという意欲が見えない。維新の(私立高校の授業料無償化で)公立校をつぶすような姿勢にも反対だ」と投票先に困ったという。
大阪16区で維新新人に競り負け、比例復活した立憲府連代表の森山浩行氏(53)は28日、「自公でも維新でもない選択肢を作りたい。候補者を立てられなかった責任は感じている」と語った。【東久保逸夫、鈴木拓也、井手千夏】
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